605.恥を晒す

喬栩は彼女の不機嫌に気づき、彼女の肩を叩いて、隣の服屋を指さして言った。「数日後は君の誕生日だから、中に入って服を選んでみて。私からのプレゼントだ」

夏語默は喬栩が彼女の気分を良くしたいのだと分かり、面子を立てて喜んでいるふりをして言った。「本当？じゃあ遠慮しないわ。どんなに高価なものを選んでも、買ってくれるのね」

「もちろんさ。好きなものを選びな。俺が君を甘やかしてるんだからな」

そう言いながら、人差し指で夏語默の顎をつついて、夏語默から白眼を食らった。

喬栩はお金に困っていないとはいえ、夏語默も相手を金づるとは思っておらず、好き勝手に高価なものを選ぶつもりはなかった。最終的に手頃な価格で、デザインも素敵なスーツを選んだ。

「默默、ちょっと待っていて。トイレに行ってくる」

支払いの時、喬栩はお腹の調子が悪くなり、少しの間その場を離れた。

何を食べたのか分からないが、お腹が激しく痛み、デパートのトイレから出てきた時には足までふらついていた。

夏語默を探しに行こうとした時、その服屋の入り口に人だかりができているのが見えた。

喬栩は不安を感じたが、足がふらついて歩くのが遅かった。

近づいてみると、夏語默が真っ青な顔で店内に立ち、両手を強く握りしめ、明らかに怒り心頭といった様子だった。

「默默！」

彼女は夏語默の側に行き、目の前の二人に視線を向けた。

その内の一人は典型的なセレブ妻の装いで、人を見下すような、高慢な態度で見下ろしていた。

そして彼女の隣にいる女性は彼女たちと同年代で、セレブ妻の腕に寄り添い、顎を少し上げ、目線の高さは目の前のセレブ妻と瓜二つだった。

喬栩はこのセレブ妻を知っていた——

顧君航の母親、薛瀾だ。

セレブ妻としての格を見せつけるため、薛瀾はビジネスマンしか読まないような経済誌やビジネス専門のテレビ局によく出演していた。喬栩が彼女を知らないはずがなかった。

実際のところ、彼女が経済チャンネルで述べるビジネス観点は、まったくの見当違いで、顧華南がなぜこんな何も分からないのに目立ちたがりの奥さんがテレビに出て恥をさらすのを我慢できているのか不思議だった。

薛瀾を見て、喬栩は何が起きたのか聞くまでもなく分かった。