632.妊娠中絶

喬栩は眉をひそめながら夏語默を見つめ、眉間の皺がますます深くなったが、彼女に直接約束することはせず、こう言った：

「先に横になって休んでいて。食べ物を買ってきてあげるから。」

そう言って、病室のドアを開けて出て行った。

病室を出た時、喬栩の心境は複雑だった。

夏語默のその子供のことについて、自分がどうすべきか分からなかった。

もし默默が顧君航に子供のことを知らせたくないと固く決意しているなら、彼女には顧君航に伝える権利などないのではないか？

でもその子供には顧君航の血が流れているのに、なぜ彼は楽しんだだけで何の責任も取らず、默默に全てを一人で背負わせるのか。

中絶には危険が伴う。默默の今の状態で中絶をして、もし何か不測の事態や後遺症が起きたらどうするのか？

喬栩の心は激しく乱れていた。

夏語默のために食べ物を買って戻る途中、婦人科の王部長に出会った。

「部長。」

「栩栩、ちょうど良かったわ。あなたに話があったの。」

王部長の厳しい表情を見て、喬栩の心臓が一瞬ドキッとした。

王部長のオフィスについて行き、座るなり喬栩はすぐに口を開いた：

「王部長、夏語默の胎児に何か他の問題があるんですか？」

「胎児の状態どころではないわ。これが夏語默の子宮の生検結果よ。子宮に早期の病変が見られるの。すぐに手術を手配しなければならないわ。」

王部長は検査結果を喬栩の前に差し出した。

喬栩自身も医者だったので、この結果が何を意味するのか、子宮の早期病変が何を意味するのかよく分かっていた。

手術をしなければ、状態が悪化して、默默の命が危ないことになる。

喬栩の心情は複雑だった。彼女はこれが何を意味するのか分かっていた。

「彼女は直ちに妊娠を中断して、その後の手術を受けなければならないわ。」

喬栩は王部長のオフィスを出て、夏語默を探しに行く途中も、王部長の言葉が頭から離れなかった。

夏語默の腹の中の子供のことを考えると、さっきまで顧君航に子供の存在を知らせるべきかどうか悩んでいたのに、その直後に王部長から子供を下ろさなければならないと告げられた。

彼女自身も母親として、当時どれほどの苦労をして喬一を産んだかを知っている。

これから下ろさなければならない子供のことを考えると、喬栩の心は重くなった。