第79話 1勝だけでいい

韓森は決して指相撲の達人とは言えないが、確かにこの分野で努力を重ねてきた。それは指相撲のためではなく、異生物の行動パターンと軌跡を予測するためだった。

これは弓兵にとって、間違いなく重要な能力の一つだ。

的を射ることは誰でもできる。五十メートル先の的の中心を射抜く人も多い。しかし、異生物が常に静止して射たれるのを待っているわけではない。本当に動く獲物を射殺すためには、予測能力こそが最も重要なのだ。

一瞬の機会を捉え、敵の行動軌跡を予測し、必殺の一矢を放つ。この点で韓森は才能があった。そうでなければ、彼は矢法の修練に励むことはなかっただろう。

後に避難所世界に入ってからは、矢法を活かす機会はなかったが、韓森は暗殺者の隠密と奇襲の技を磨いた。これは予測と神経の強靭さ、そして反応力により高い要求が課せられる。少しでも間違えば、異生物を一撃で仕留められなければ、異生物の最も凶悪な反撃を受けることになる。

避難所に入って一ヶ月余り経ってから、韓森は一度も失敗したことがない。それは彼の判断力とタイミングの把握能力がいかに優れているかを示している。

今や韓森は多くの遺伝子を手に入れ、神経反応速度が大幅に向上した。指相撲のようなゲームで彼に勝つのは、本当に容易なことではない。

「グー…チョキ…パー…」

方景奇が再びパーと言い終わった剎那、韓森と方景奇は再び手を出した。今回も韓森はチョキを出し、唐真流はパーを出した。

唐真流は自分が負けるとは思っていなかった。果物皿を取りに行こうとした時、すでに酒が彼の顔にかけられていた。顔が火照るような感覚があり、鼻の中にまで酒が入り込み、唐真流は鼻が酸っぱくなるほど苦しんだ。

「唐さん、一点負け」と方景奇は真面目な顔で記録した。

唐真流は当然納得がいかず、近くのタオルで顔を拭うと、韓森を見つめて言った。「もう一回」

韓森はもちろん喜んで続けた。この指相撲界の小覇王である唐真流は、十回中四回しか勝てなかった。しかし、その四回全てにおいて、韓森は果物皿で酒をブロックし、唐真流は一度も韓森に酒をかけることができなかった。

逆に彼が負けた時は、毎回韓森が先に酒をかけてきて、唐真流は頭から顔まで酒まみれになり、まるで水浸しの鶏のようだった。