「嫣然、早く学校の天網コミュニティに行って」紀嫣然が授業を聞いているとき、隣に座っている曲麗麗が突然彼女を指で突いて、声を潜めて言った。
「邪魔しないで、授業中よ」紀嫣然は機嫌が良くなかった。ここ数日韓森の影も見えず、歯がゆい思いをしていた。
「于明志と唐真流が私たちの学校の新古武派で教育支援をすることを知ってる?」曲麗麗は興奮した表情を浮かべながら続けた。
「知ってるわ。でも芸能人の追っかけには興味ないわ」紀嫣然は上の空で答えた。
「于明志が黒白拳のデモンストレーションで大神を指名したんだけど、逆に大神にやられちゃって、三発も黑拳を食らったのよ」曲麗麗は噂話好きそうな顔つきで言った。
「大神?どの大神?歐陽小傘?」紀嫣然は一瞬戸惑い、最初に思い浮かんだのは新古武派の歐陽小傘だった。黑鷹軍事学校では彼が一番強いとされていたから。
「歐陽小傘は歐陽小傘よ。私が言ってるのは大神、大神よ」曲麗麗は真面目な顔で言った。
「どの大神なの?」紀嫣然はまだピンと来ていなかった。
「他に誰がいるの?戰甲大会で全てを圧倒した人よ。私たちの学校で大神と呼ばれる人は彼以外にいる?」曲麗麗は紀嫣然を白い目で見た。
「韓森?」紀嫣然は少し驚き、すぐに通信機を起動して学校の仮想コミュニティに接続し、嚴教授の授業同時配信に直接アクセスした。
配信を開いた時、ちょうど于明志が韓森に向かって一撃を放つところだった。韓森は避けようともせず、ただ片手を伸ばして于明志の拳を受け止めた。
「さすがの自信ね。大神ってほんと格好いい。でも于明志は弱すぎ。私の唐真流が出場してないのが残念。あの人なら本当に見応えがあったはずよ」曲麗麗は興奮して言った。彼女は唐真流のファンで、最初から唐真流を見ていたから韓森のことを知っていたのだが、すぐに付け加えた。「でも何か大神って見覚えがあるような...どこかで見たことがあるような気がするんだけど」
「当然見たことあるでしょ。星宇カップの時に見たじゃない」紀嫣然は頬を赤らめながら急いで言った。
「そう?でも他のどこかで見た気がするんだけど」曲麗麗は少し困惑したが、すぐにその考えを振り払った。「于明志がまた来たわ」