第208章 ママ……

栗原愛南は電話を切ると、森川北翔の方を見た。涙を流したばかりの目は驚くほど輝いていた。「栗原奥様が目を覚ましました。」

森川北翔は無意識に寝室の方を振り向いて、躊躇いながら言った。「私は...」

「あなたはここでおばあさまの面倒を見ていてください。私が戻って彼女を見てきます。」

栗原愛南は彼を困らせないように、そう言い残して外に向かった。

森川北翔も強引にはせず、紀田亮に言った。「愛南を送っていってくれ。」

栗原愛南は車に座り、心の中はとても焦っていた。いつも時速30キロでしか運転しない彼女だが、今はもっと速く走ってほしいと思った。

30分後、車は病院の入院棟に到着した。

栗原愛南は車を降りて建物の中に走り込もうとしたが、突然足を止め、無意識に駐車場の方を見た。

すると、栗原叔父さんの車が停まっていた場所が今は空になっていた。