第293章 彼女は栗原愛南!

張本朔は直接二通の絶縁状を手書きして、彼と雪音ちゃんがこれ以降何の関係もないことを表明し、そして栗原愛南を見つめた。「お前、サインしろ!」

栗原愛南がまだ芝居を始めていないうちに、張本朔のお母さんが一歩前に出て、彼女の手を掴んだ。「サインしろと言われたらサインしろ。うちの朔にたかろうなんて考えるな。これからは離婚したら、お前とそのお荷物は私たちから離れていろ!」

栗原愛南は恐れをなしたように見え、悲しげにサインをした。

張本朔はすぐに離婚協議書と絶縁状を一通ずつ取り上げ、興奮して立ち上がった。彼と広石こころは目を合わせ、二人は張本朔のお母さんを連れて直ちに外に向かった。

張本朔のお母さん:「こんなに急いで行くの?」

張本朔:「当然さ。あいつがまた生活費なんか要求してくるかもしれないからな!」

張本朔のお母さんは少し名残惜しそうだった。「ここを離れたら、どこに住むの?」

広石こころは笑って言った。「おばさん、まずは私のところに引っ越しましょう。3LDKがありますから。」

「いいわね、こころちゃん。これからは私がお世話するわ。妊婦さんなんだから、無理をしちゃダメよ!」

張本朔のお母さんは自分のスーツケースを持ち上げ、二人の後についていった。

彼らが玄関に着いたとき、怒りに満ちた表情の栗原井池を目にした。

張本朔は突然恐れをなした。「栗、栗原さん?いつ来られたんですか?」

栗原井池は冷たい目で彼を見つめた。

そして彼らに背を向けている愛南を見た。

愛南は泣いているように見え、肩が少し震えていた。これに彼は怒りと無力感を感じた。

彼は直接口を開いた。「張本朔、これがお前の本妻への扱い方か?」

張本朔は戸惑い、そして唾を飲み込んだ。「栗原さん、私と愛南の離婚は双方の合意です。私たちは...」

もう見られてしまったからには、隠すのも良くないと思い、彼は笑顔を作って言った。「離婚協議書の内容も、彼女が同意したものです...」

「同意だと?」

栗原井池は大股で栗原愛南に近づき、直接言った。「俺は自分の目で見たんだ。お前とお前の母親が彼女を威圧していたのを。どこに彼女の同意があったというんだ...えっ...」

この言葉とともに、彼も栗原愛南の顔をはっきりと見た。