第320章

江口奥様は困惑した様子で森川北翔を見つめ、次に栗原愛南を見た。自分が聞き間違えたのではないかと思い、「何ですって?」と聞き返した。

森川北翔はこれ以上話したくなかった。

栗原愛南は笑いながら言った。「彼の言う通りにしてください。明日の朝、ご主人に契約書を持って森川グループへ行ってもらってください。」

江口奥様は「……」

思わず再び森川北翔を見つめた。男性はスポーツウェアを着ていたが、上品な雰囲気を醸し出していて、普通の人には見えなかった。

もしかして……彼は森川家の人なのだろうか?

江口奥様がそう考えていると、栗原愛南は言葉を終えると雪音を抱き上げ、車の後部座席に座った。そして森川北翔は運転席に座った。

江口奥様は「……」

この人は愛南の運転手なのかしら?

それとも愛南の夫?