第340章

南條テクノロジーの愛南はなぜ突然新エネルギーの知識を持っているの？

　　しかも新エネルギーの最新技術まで出してきた……

　　これにはただ一つの説明しかない！

　　井上斉子は真相を見抜いたような気がした……

　　竹歳明は井上斉子にそんな風に見つめられ、たちまち落ち着かなくなった。「井上さん、これは……」

　　井上斉子はさらに一歩前に出て、彼の手を掴んだ。「竹歳明、教えて。そうなの？」

　　竹歳明は口角を引き攣らせ、そして答えた。「もちろん……」

　　井上斉子の目は一層輝いた。

　　しかし次の瞬間聞こえたのは「……違います！」

　　井上斉子は一瞬固まった。

　　竹歳明は咳払いをして、口を開いた。「井上さん、こんな風に尋ねられたので、はっきり言いましょう。南條テクノロジーの社長の愛南は、実は我々の社長の双子の姉なんです」

　　井上斉子はここまで聞いて、少し間を置いた。

　　竹歳明はため息をついた。「社長が亡くなった後、彼女の会社は本来直系親族に渡るはずでした。でも栗原奥様の姿も見えず、社長にはこの姉しか残っていなかったので……」

　　井上斉子は理解した。「つまり、恩人の会社は今、愛南の会社になったということ？」

　　竹歳明は頭を掻いた。「そうです」

　　これは彼が考えた対外的な説明だった。

　　自分の会社はいずれ南條テクノロジーと合併しなければならない。それは上司を助けるのにも都合がいい。この説明は完璧だと言えるだろう。

　　竹歳明は分かっていた。上司の身元は今明かすことはできない。

　　栗原愛南は何も言わなかったが、この点については暗黙の了解があった。

　　井上斉子の表情を見ると、彼は自分の説明を相手が信じたことが分かった。そこで咳払いをして、何か言おうとしたが、井上斉子が口を開いた。

　　「つまり、あなたたち恩人の部下は愛南の部下になり、森川北翔というあの恩人の夫も愛南の男になった。あなたたちは皆、愛南を恩人だと思っているの？」

　　竹歳明は頭を掻きながら、彼女がなぜこの言葉を言う時にこんなに悲しそうなのか分からなかったが、それでも頷いて言った。「え？森川北翔が上司の男になった？」

　　何だこれは？

　　彼は知らなかった！