木村雅は栗原愛南に引っ張られて立ち上がり、彼女を助けを求めるように見つめながら、病室から出たくない様子でいた。
木村旭が彼にどんな仕打ちをしようと構わないが、妹に迷惑をかけたくなかった。
彼の葛藤を見抜いたのか、栗原愛南はため息をついた。「まだ分からないの?木村旭は何があっても君たちを許さないわ。だからここにいても意味がないのよ。あの人の心は石でできているの、決して柔らかくならないわ。」
木村雅は木村旭を見つめた。
木村旭は嘲笑って言った。「もし君の子孫の根も絶たれたら、犯人を許せるのかい?確かに私は君たちを許さない。少しずつ、ゆっくりと苦しめてやる!」
木村雅は目が真っ赤になり、彼を睨みつけた。
そのとき、木村知念が突然木村雅の手を引き、手話で言った。「お兄ちゃん、行きましょう。あの人を見ていたくないの。」
木村雅は頭を垂れ、彼女と一緒に部屋を出た。
木村雅は足を引きずりながら歩いていた。二人が病室を出たばかりのとき、木村旭の嘲笑う声が聞こえてきた。「はっ、この兄妹は障害者連盟かい?足の不自由な者と口の利けない者、本当に惨めだな!」
木村雅の足取りが一瞬止まったが、振り返ることはなかった。
病室を出てから、木村雅はため息をついた。「奈々、お兄ちゃんが悪かった。」
木村知念は首を振り、手話で「そんなこと言わないで!お兄ちゃん、私たちは家族よ。」と表現した。
木村雅はうなずいた。「安心して、どうしようもなければ転校すればいい。それでもだめなら、海外に行こう。僕の足もほとんど良くなってきたから、明日から仕事を探して、君のためにお金を貯める。木村家の力が海外まで及ぶとは思えない!」
木村知念は力強くうなずき、手話で続けた。「私たち二人が一緒にいれば、どんな生活でも素晴らしいわ。」
彼女は自分の携帯電話を見つめた。
木村雅は彼女の様子を見て、直接言った。「ノラ研究所の面接を受けたいの?」
木村知念はうなずいた。
木村雅はため息をついた。「ノラ研究所のことを調べてみたんだ。確かに彼らは実習生を採用しないらしい。奈々、これは誰かに騙されたんじゃないかな。」
木村知念も意気消沈し、それはありえないと思った。
栗原愛南は口角を引きつらせた。「騙されたかどうかは、明日行ってみれば分かるでしょう?」
木村知念は躊躇の表情を見せた。