第538章

栗原愛南はその名前を追って、後ろの方を調べてみた。

思わず苦笑いしながら森川北翔を見た。

森川北翔は咳払いをして、「その人は愛南という名前で、名前と時期は確かに一致しているんだ」と言った。

栗原愛南は目を白黒させそうになった。「でも彼女は斎藤姓で、斎藤真司の実の妹よ!!」

そうだ。

斎藤真司の周りの女性たちの名簿の中で、斎藤愛南だけが名前に「愛」の字が入っていた。

しかし皮肉なことに、斎藤愛南だけは斎藤真司と結婚するはずがない人物だった。

栗原愛南は額に手を当てながら、もう一度名簿を上から下まで見渡した。名簿には女性がかなり多く載っていて、京都のきひめたちの中には既に進路が決まっている者もいれば、まだ調査中の者もいた。

森川北翔は咳払いをして、「考えてみれば、あなたたちの名前には皆『愛』という字が入っている。それは南條家の印なのかもしれない。だとすれば、相手がそんな形で身元を露呈するはずがない」と言った。

栗原愛南もうなずいた。

彼女の名前の「愛」は、当時母親の南條静佳を慕って付けたものだった。もし普通に名付けられていたら、この名前にはならなかっただろう。

祖母の南條奥様、母の南條静佳、そして姉の愛南について...母には父がいなかったようで母方の姓を名乗り、愛南は南條家に連れ去られたので、当然南條姓を名乗ることになった。

もしかしたら森川北翔の推測は、単なる偶然の一致なのかもしれない?

二人が考えを巡らせているうちに、車は栗原家に到着した。

帰り道で既に兄たちが栗原叔父さんに連絡していたため、栗原愛南が駐車場に着くと、栗原叔父さんが玄関で彼女を待っているのが見えた。

五十歳の男は、風霜に耐えてきた両こめかみに白髪が増えていたが、それでも若かりし頃のハンサムさは隠しきれなかった。彼は静かに立ち、熱い眼差しで彼女を見つめ、そして普段は冷たく無口なその男が微笑んで言った。「愛南、おかえり」

彼が呼んだのは愛南だった...

栗原愛南は目に熱いものを感じ、うつむいて「うん」と答えた。

父娘とも寡黙な性格で、この言葉を交わした後、栗原叔父さんは体を横に寄せた。

栗原刚弘が飛び出してきて「妹、おかえり!」と声をかけた。

栗原光彦も笑顔で「そうそう、今夜は家で豪華な夕食を用意したんだ。従姉妹、何が好きなの?」と尋ねた。