第592章

川内美玲は栗原愛南を呆然と見つめていた。

彼女の顔には、信じられない様子と戸惑いが浮かんでいた。

幻覚を見ているのではないかとさえ思った。

目をこすって、もう一度見てみると、目の前にいるのは依然として栗原愛南で、変わっていなかった！

川内美玲の目が少し赤くなった。

栗原愛南も、ここで川内美玲に出会うとは思っていなかった。

この堅物の女性は今、自分を見つめる目に涙を浮かべそうになっていた。今は正体を明かすことはできないと分かっていたが、それでも心が痛んだ。

迷っているところに、別の人物から質問が飛んできた。「誰が通報したんですか？」

栗原愛南はすぐに我に返り、答えた。「私です。」

川内美玲は彼女を見つめ、拳を握りしめた。「お名前は。」

「栗原愛南です。」

この三文字を聞いた途端、川内美玲の手が震えた。「栗原愛南？」

「愛南です。歌奈の愛南です。」

川内美玲は一瞬躊躇したが、そのまま記録した。その後、二人は栗原愛南に対して通常の質問を行い、事情を聞き終わった後、栗原家の監視カメラの映像を確認し、八木珊夏の殺人の証拠を発見した。

八木珊夏は言葉を失った。

川内美玲は栗原愛南に向かって尋ねた。「彼女の犯行動機は何ですか？」

栗原愛南は眉をひそめ、突然口を開いた。「他人の指示を受けています。」

この言葉に、川内美玲は少し驚いた。

彼女はすぐにペンを取った。「誰の？」

「狐と呼ばれる人物です。本名は南條真美、現在斎藤家にいます！」

川内美玲はすぐに尋ねた。「証拠はありますか？」

「はい。」

八木珊夏はこの言葉を聞いて、冷笑した。「あなたに何の証拠があるというの？」

栗原愛南は彼女を見た。「確かに私には証拠はありませんが、あなたにはあるはずです。」

八木珊夏は嘲笑した。「たとえあったとしても、なぜあなたに渡すの？」

栗原愛南は彼女を見つめた。「今、私に渡すことだけが、あなたが生きる道だからです。」

八木珊夏は一瞬驚いた。

栗原愛南は直接切り出した。「毒を盛られているでしょう？」

八木珊夏は慌てた様子で「どうしてそれを？」