第632話

他の特務機関のメンバーは呆然としていた。栗原愛南が試合場を去るまで、ようやく我に返った。

栗原刚弘が最初に叫んだ。「すげえ!大先輩がたった一撃でボクシングチャンプを追い込んだ!一撃でボクシングチャンプに勝った!かっこよすぎる!最高だ!」

他のメンバーも興奮し始めた。

これは武術で交流する世界だ。誰が強く、誰の拳が大きく、誰の武装が優れているか、それが全てだ!

栗原愛南はこの一撃で、特務機関全体を征服した。

川内美玲は感嘆して口を開いた。「愛南はいつ武術を学んだの?私、全然知らなかった…」

川内亮文は彼女の隣に立っていて、思わず尋ねた。「彼女の名前は愛南じゃなかったの?どっちが本当なの?栗原愛南なの?それとも君の親友の栗原愛南なの?」

川内美玲はすぐに口を閉ざした。「両方よ!」

藤原夏菜子と藤原部長も栗原愛南が去った方向を呆然と見つめ、二人は目を合わせ、その瞳には感嘆の色が浮かんでいた。

藤原部長はゆっくりと口を開いた。「今期の山田家の大先輩は、凄まじいな」

藤原夏菜子はニヤリと笑い、血まみれの歯を見せた。

藤原部長は笑いながら言った。「いい、とてもいい!我々の特務機関に、強力な援軍が加わった!」

藤原夏菜子も頷いた。「以前は大先輩が姿を見せないことを心配していた。ただの見かけ倒しじゃないかと。山田家は長年ずっと大先輩が男性だったのに、この代になって掌門は長い間內門弟子を持たず、最後に女の子を迎え入れた。みんな確信が持てなかった。でも今日を過ぎれば、もう誰も大先輩の実力を疑うことはないでしょう!」

藤原部長は頷き、国際部の責任者を見た。「もう誰も我々特務機関の能力を疑うことはないだろう!」

国際部の責任者の表情が一瞬凍りついた。

栗原刚弘は直接笑った。「さっき誰かが私たちのことを東亜病夫と言ったような気がするんだけど?」

国際部の責任者は慌てて手を振った。「いいえ、私は言っていません...そんなことはありません」

「そうですか?」

「私は聞きましたよ!」

川内美玲側の人々が口を開いた。

「私も聞きました!」

藤原部長側の人々も口を開いた。

元々両側のメンバーは配置転換で互いに疎遠になっていたが、この一件を経て、彼らは再び団結した。

内心では相手を軽蔑していても、互いに戦友であり、背中を任せられる仲間だった。