第645章

栗原愛南は一瞬立ち止まり、目に涙を浮かべた。

彼女は驚いて川内お爺様を見つめ、何か言いたかったが、自分の敬愛の念をどう表現すればいいのか分からなかった。

このような老人は、祖国のために一生を捧げてきたのだ。

栗原愛南にも分かっていた。川内亮文と川内美玲の性格からして、たとえここ数年間、スパイのレッテルを貼られ、人々から嫌われる存在となっていても、真実を知った瞬間、彼らはお爺様を恨むことはないだろう。

川内美玲はただ、お爺さんが自分を失望させることはなかったのだと思うはずだ。

栗原愛南は、川内美玲がそういう人だと信じていた。

彼女は拳を握りしめ、お爺様を見つめた。

川内お爺様は口を開いた。「愛南さんだね?末美がよく君のことを話していたよ。私の一番の親友だと言っていた。でも、約束してほしい。彼女を助けないでくれ。私が事件に巻き込まれた後、もし私の息子と孫娘が庇護を受けることになれば、M国の人々に疑われることになる。そうなれば、藤原明正が帰国しようとしても、より困難になってしまう!我々は彼に不安要素を残してはいけないんだ。」