栗原牧夫は少し間を置いて、電話で言った。「南條家の継承者は全て女性だということは、もう知っているだろう?」
「ええ」
「しかし、この世界は公平なものだ。高い知能を持つ者同士が結ばれても、低い知能の子供が生まれる可能性がある。南條家の各世代の継承者争いは常に激しい。継承者を選ぶだけでなく、上位10名も選出される。次世代の継承者は、この10人の子供たちの中から選ばれる。つまり、上位10名の子供たちだけが、次の継承者になる資格があるということだ」
栗原愛南は一瞬驚いた。「でも、母は前世代の上位10名ではなかったはずだから、私には資格がないということですね…」
もし母が前世代の競争で上位10名に入っていたなら、彼女と栗原郁子が取り違えられたとき、郁子も南條家のこの世代の候補者の一人になっていたはずだ。