森川元碩は森川辰がなかなか話さないのを見て、冷笑いを浮かべた。「さっきはダメだと言っていたのに?どうして今は黙っているんだ?言っておくが、後悔するなら、これが最後のチャンスだぞ!」
森川辰は目を伏せて言った。「ダメだと言ったのは...市役所が同じ日に離婚と結婚の手続きをしてくれないからです。お父さん、そんな常識もないんですか?」
森川元碩:??
彼の表情は一瞬にして暗くなり、得意げな表情も消え失せ、怒りの目で森川辰を睨みつけた。「お前、私に向かってなんという口の利き方だ?」
森川辰:「ただ知識をお伝えしただけです。」
森川元碩は深く息を吸い込んだ。「よし、よし、この不孝者め。今日こそお前とお前の母親を家から追い出してやる!」
そう言うと、彼は大股で外へ向かった。
森川辰はその様子を見て、後を追った。
広石秋子と森川麻理亜は森川おばあ様を見た後、森川元碩の方を見て、結局二人は森川元碩の後を追うことにした。やはり離婚は彼らにとって大事な出来事だったからだ!
離婚してこそ、彼らは結婚でき、森川麻理亜は私生児から堂々とした森川家の令嬢になれるのだから!
森川辰は栗原愛南の方を向いて言った。「私の方の取締役会は...」
彼は一瞬言葉を切り、どう休暇を申請すればいいか迷っていた。
現在会社の取締役は二人だけなのだから。
彼が考えている間に、森川元碩がまた口を開いた。「何だ?またも言い訳を探そうというのか?取締役会だと?お前たちの会社は設立したばかりで、どんな取締役会が開けるというんだ!」
森川辰は眉をひそめた。「取締役会は後回しにして、母と市役所に行くと言っているんです。」
栗原愛南はうなずいた。「わかりました。用事が済んだら、また予定を組みましょう。」
彼女はそう言って、森川北翔と森川おばあ様を見た。
しばらくの間おばあ様に付き添うと約束したので、彼女も外出を控えめにしたほうがいい。そこで栗原愛南は森川辰に言った。「用事が済んだら、会社の報告は全て家でしましょう。」
森川おばあ様はこのひ孫に好感を持っているので、最後の時間に森川辰が訪問する機会を作ることは、おばあ様への償いにもなる。
案の定、栗原愛南の言葉に、森川おばあ様の顔に喜びの表情が浮かんだ。
その表情は薄いものだったが、栗原愛南には捉えることができた。