ツーショット撮影

ワンショットが終わった後、天野奈々は撮影スタジオを出た。シーンを変更するため、それに合わせて衣装も変える必要があった。しかし、メイクルームに戻ると、雨野柔子のアシスタントがドアを守り、挑発的な目つきで天野奈々に向き合っていた。

「冬島社長が中にいるので、みなさん少々お待ちください。」

天野奈々は落ち着いて雨野柔子のアシスタントを一瞥し、軽い力で彼を押しのけ、メイクルームのドアを開けた。

部屋の中で、雨野柔子は冬島翼の膝の上に座り、熱烈に絡み合っていた。この光景は、かつて二人がベッドで密会しているのを発見した夜と同じように、挑発的で周りを気にしない様子で、まるで勝利を迎えようとしているかのようだった。

天野奈々はこの光景を見ても、以前のような怒りや痛みはなく、目には軽蔑と嘲笑いだけが浮かんでいた。

雨野柔子は天野奈々が直接入ってくるとは思っていなかったが、むしろ天野奈々の自然な態度に、続けられなくなってしまった。

冬島翼もそれに乗じて彼女を押しのけた。「夜、ホテルに戻ってから続きをしよう。」

「愛してるわ、翼。」雨野柔子は機会を逃さず告白した。勝利者の姿勢で。なぜなら、冬島翼は彼女が天野奈々から奪った最高のものだったから。もちろん、それは彼女がそう思っているだけだが。

「俺も愛してるよ、ベイビー。」冬島翼は腕の中の人を慰めた後、立ち上がって天野奈々に警告した。「これから二人の共同撮影の部分だ。柔子によく協力するんだ。柔子も同じだ。お互いにトラブルを起こすな。もっと大きな笑い者にならないようにな。わかったか?」

「翼、あなたはまだ天野奈々のことをわかってないのね?彼女は私たちにトラブルを起こしに来ただけよ。安心して、私が彼女を見張っておくわ。」

天野奈々は最初から最後まで一言も発しなかった。ただ流暢な英語で衣装担当者とメイクアップアーティストに仕事を続けるよう頼んだ。冬島翼は怒りの表情で化粧室を出て行き、撮影スタジオのスタッフから雨野柔子の撮影状況を聞こうとした。得られた答えは、「良い」「将来性がある」「素晴らしい」「大ヒットするだろう」というものだった。天野奈々については聞くと、彼らは意味深な笑みを浮かべるだけで、何の評価もしなかった。