第145章 私をそんなに甘やかさないで

帝国ホテルに着くと、ドアが閉まる音が聞こえ、安藤皓司と中村さんは墨野宙に部屋の外に閉め出されてしまった。皓司が最後まで見ていたのは墨野宙の背中だけだった。

天野奈々は身長178センチ、国際的なモデルの標準的な体型で、少し高いヒールを履けば185センチほどになる。普通の男性が彼女の隣に立つと、自ら恥をかくことになる。たとえ187センチの皓司でさえ、奈々の隣に立っても大差はない。しかし、この男は...奈々を抱きしめたとき、奈々が彼の前で小鳥のように小さく見えるのだ!

体格だけでなく、最も重要なのはオーラだ。

侵すことのできない威厳、挑戦できない強さ、近づくことのできない危険さ。それらが皓司の心に一つの確信を与えた。

これは決して普通の男ではない。

皓司は一瞬戸惑い、中村さんの方を向いて、薄い瞼を少し持ち上げながら言った。「あなたはずっとこの男が誰だか知っていたんでしょう?」

ホテルの暖房のおかげで、中村さんはもうダウンジャケットに隠れる必要がなくなり、目だけを出して答えた。「当然よ。私は3年間奈々のそばにいたんだから。それに、あなたがもう少し奈々に気を配っていれば、彼が来る必要もなかったはずよ...」

「つまり、彼は奈々を心配して一緒に来たってこと?」

「当たり前でしょ。彼はとても忙しいのよ...毎回外出するときは、数日前から仕事を済ませておくの」中村さんは自然に皓司に白眼を向けた。「さっきも見たでしょう。自分が寒い思いをしても、奈々に霧島風を当てたくないのよ。あなたにそんなことできる?」

皓司はずっと、奈々の背後にいる男は日の目を見られない存在だと思っていた。たとえ見られたとしても、大したことのない人物だと。

しかし、先ほどの出来事を経て、彼はその考えを改めなければならなくなった。大物と言うべきだろう。ただし、日の目を見られるかどうかは分からない...

「行こう、予約したホテルに」皓司は笑みを浮かべた。撮影時間は2日間準備されているのだから、本人に会えないはずがない。

実際、二人が帝国ホテルを出てみると、会社が予約したホテルはちょうど向かい側にあることが分かった。奈々に会いたければ、電話一本で済むし、他人の疑いを招くこともない。