第208章 正式解約

翌日の午前中、エンターテインメントニュースで成田空港の盛況が放送され、テレビ局が現地での記者のインタビューを中継していた。

「これは恐らく、私がジャーナリストとしてのキャリアだけでなく、生まれてこの方初めて目にする光景です。ファンが大規模に集結しているのに、それは誰かを好きだからではなく、誰かを嫌っているからなのです。」

「現場を見ればわかりますが、これらのファンは横断幕を掲げ、手札を持っていますが、例外なくモデルの天野奈々への怒りを表現するためのものです。」

そう言った後、記者は自分の腕時計を見下ろし、また顔を上げて、カメラに向かって続けた。「我々の知る限り、天野奈々のフライトは今日の午前10時に空港に到着する予定で、現在まであと20分もありません。現在、空港は緊急の警備作業を行っています。ここで記者として願うのは、天野奈々が無事に脱出できること、どんなことがあっても危害を加えられないことです。」

中村さんはニュースを見終わると、すぐに手を伸ばしてテレビを消した。そして振り向いて天野奈々を見ると、彼女は四角いダイニングテーブルの端に立って花の枝を剪定していた。

「契約解除の通知書は、すでに弁護士に送らせました。今頃は神野真美の手元に届いているでしょう。」中村さんは振り向いて天野奈々に言った。

天野奈々はまだ何も言わず、手元の作業を続けていた。

「奈々ちゃん……私が昨夜自虐的に、あのコメントを見た後どれほど怒ったか分かる?ほら、目が泣いて腫れてるでしょ……」中村さんは自分のクルミのような目を指さして言った。

「それはあなたが自業自得よ。」天野奈々は平坦な声で言った。

「これも全部あなたのためじゃない。あなたは本当に"群を抜いて"異質ね。普通のファンは人山人海で自分の推しを迎えに行って、愛を込めて"あなたしか好きじゃない"って歌うのに。見てよ、あなたのファンときたら、横断幕を掲げて出て行けだの、謝れだの、死ねだのって……」

「まあ、この一戦を経て、私も歴史に名を残せるかもしれないわね。」天野奈々はバラの剪定を続け、艶やかな花をガラスの花瓶に挿した。

しかし、天野奈々は中村さんが何をしたいのかだいたい分かっていた。要するに彼女の気持ちを探りたいだけだ。