投票の出来事は大きな波紋を呼ばなかった。ファンたちはまだ墨野宙と天野奈々の関係に夢中だったからだ。確実な答えが得られるまで、この熱狂は長く続くかもしれない。
しかし夏目凛はそれを気にしていなかった。東雲愛理に見せることができれば、この計画は無駄ではなかったことになる。
東雲愛理が夏目凛の提案を黙認したので、二人が海輝に戻った後、夏目凛は墨野宙に一度会わせてほしいと頼んだ。
山本修治が内線で墨野宙の意向を確認し、承諾を得た。
「愛理、必ず君のために頑張るから、安心して」夏目凛は階段を上る前に、東雲愛理をじっと見つめ、瞳には異常なほど真摯で熱い光が宿っていた。
東雲愛理はいつもどおり、うんざりしたように頷き、態度はやや適当だった。夏目凛の姿が自分の視界から消えたときになって初めて、彼女は携帯をしまい、立ち上がって山本修治を探した。