第277章 この権守社長は、イカサマのベテランだ

権守父子が去った後、墨野宙は天野奈々の方を向き、甘やかすような、しかし困ったような表情で尋ねた。「そんなに早く承諾して、負けるのが怖くないの?」

「私、テキサスホールデムができるわ」天野奈々は墨野宙に答えた。「私がいるのに、あなたが出る必要なんてあるの?」

「遊び事は二世祖の得意分野だぞ。本当に勝てると思うのか?」

「あなたが私を負かすはずがないわ」天野奈々は頭を下げ、深く息を吸った。「なぜ私がプレイできるのか、聞かないで。それは過去の話だから。でも今夜は、あなたのために一度戦いたいの。いいでしょう?」そう言って、天野奈々は墨野宙の袖をつかんだ。

墨野宙はその細い右手を見て、突然笑みを浮かべた。「断れるわけがないだろう?」

「でも、もし私が負けたら…」

「それなら俺が妻の代わりに罰を受けて、お前の代わりに権守焔に負けるしかないな」