山本修治は内心崩壊しそうだった。墨野宙が前回の海輝のパーティーでの二人の写真を公開させたのは、ただ天野奈々の気分をよくするためだったのだ。
こんなに妻に尽くす必要があるのか?
「では次はどうすればいいですか?」
「会社名義でスターキングに警告を出し、デマを流さないように。権守焔に出て事実を明らかにさせる」と墨野宙は直接言った。
「しかし、あの二世祖は絶対に妥協しないでしょう。今回の目的は騒ぎを大きくすることですからね」
「だからこそ、事態がエスカレートした後で、海輝に記者会見を開かせ、彼を天野奈々の"噂の彼氏"として出席させる。私の天野奈々が彼にどうしたのか、見てみようじゃないか」と墨野宙は平然と言った。「もうスターキングの面子を立てる必要はない。二世祖がそんなに遊びたいなら、スターキングの顔に泥を塗るのも当然のことだ」
「以前から、スターキングの株主が権守家の経営権に強い関心を示していると聞いていました」と山本修治も墨野宙の言葉に続けた。
この言葉を聞いて、墨野宙は携帯を持つ右手を下ろし、すぐに電話を切った。
瞳の中の眼差しは、必ずしも深く鋭いものではなかった。
権力争いなんて、スターキングだけの問題じゃない。最近、海輝にも...大きなニュースを起こそうとする人間がいるのだから。
...
ネット上では権守焔が写真を公開したことで大騒ぎになり、当然ながら罵り合いが起こっていた。
しかし今回は、ファンたちはもう孤軍奮闘ではなかった。出国前に、天野奈々は墨野宙に約束していた。これからはファンたちを大切にすると。だから天野奈々は中村さんのアカウントを使ってSNSにログインし、グループに現れた。
「今回もきっと私たちの天野が黒く塗られているんでしょう...」
「どうしてこの人たちは私たちの天野が幸せなのを見て耐えられないんでしょうか?」
「私たちの天野が墨野宙と一緒にいることを妬んでいる...」
「でも私たちが反論しても、一般人からの批判を招くだけです。天野は何も悪いことしていないのに、いつも真っ黒に塗られてしまう。ダメだ、後で天野が何回黒く塗られたか数えてみよう」
「私たちは本当に四面楚歌で、あらゆる方面から批判されて、もう泣きそうです」