深夜、山本修治は証拠を陸野徹と墨野宙に送った。村上隼人は流石にプロのパパラッチだと思った。撮影技術と角度において、J-kingと高宮美咲を完璧に露出させながら、自分は一切映っていなかった。
映像の内容には、高宮美咲がJ-kingに台本を渡すシーン、ファンの乱闘の真相、さらにはJ-kingの権力奪取の企みまでも含まれていた...
陸野徹は夜遅くにハイアットレジデンスに到着し、墨野宙の今後の対処法を知りたがった。
「奥様がまた功績を立てられましたね」陸野徹は映像を見て、天野奈々が以前村上隼人を助けたのがいかに賢明な決断だったかを感嘆せずにはいられなかった。
この世には本当に、悔い改めるという言葉があてはまるものがあるのだと。
「まだ村上隼人のことは好きになれませんが、少なくとも彼のやったことは嫌いじゃなくなりました。社長、我々はこれからどうしましょうか?」
「映像を3つに分けろ。台本の部分、ファンの騒動の部分、そして権力奪取の部分だ。まず台本の映像を持って高宮美咲と交渉しろ...高宮美咲の口から更に価値のある情報が得られるかもしれん。権力奪取の部分は株主全員に配布しろ」墨野宙は書類を手に取りながら、顔を上げずに言った。「ファンの騒動の部分は最後に公開する」
「はい」陸野徹は頷いた。結局のところ、J-kingの現在の行動だけでは、この毒瘤に相応の罰を与えるには不十分だった。だから、より多くの証拠を集める必要があったのだ。
そしてそれまでは、映像を公開することはできない。なぜなら...それは村上隼人を危機に陥れる可能性があるからだ。
しかし幸いなことに、すべては墨野宙の掌握下にあった...
「この2日間、社長は奥様に会いに行っていないのではないでしょうか?」陸野徹は推測して尋ねた。天野奈々が2日連続で深夜まで撮影を待っていたのに、彼は電話で気遣うこともしていなかったからだ。きっと自分が心配するのを恐れているのだろう。「聞いたところによると、今もまだ撮影を待っているそうです」
墨野宙は顔を上げ、陸野徹を深く見つめてから、手元の書類を閉じた。
陸野徹の推測は正しかった。彼は確かに心配するのが怖かったのだ...