第343章 人格が良くても演技力とは限らない

斎藤楓の結婚披露宴の後、天野奈々と墨野宙の二人は多くの芸能誌の一面を飾った。その人気ぶりは、多くの芸能人が及ばないほどだった。しかし、その後、天野奈々は再び表舞台から姿を消し、撮影現場に戻って静かに撮影に専念した。

しかし、アジアモデル公信榜の今季のランキングが発表されると、天野奈々は2位の倍以上の驚異的な収入でアジア1位となった。

彼女の大きな写真が世界的なニュースアプリに掲載されたが、人々は驚いたことに、この勢いに乗るアジアのモデルが今回の秋冬ファッションウィークに全く姿を見せていないことに気づいた!

「天野奈々が本当に撮影に行ったのなら、今のこの全てを捨てるなんて、勇気がありすぎる」

「実際、芸能人の価値は、その存在形態にこだわる必要はない。天野奈々は自分の立ち位置をよく理解し、自分に挑戦したいと思っているのだと思う」

「彼女という人は好きだけど...でも、本当に演技をするなら、私は見ないだろうな」

「そう、人柄が良いからといって演技が上手いとは限らない」

天野奈々は間違いなく驚異的だった。デビューして9年、わずか4ヶ月で一流モデルの地位に返り咲き、世界的スーパーモデルになろうとしていた時に、彼女はこんな大きな転換となる決断をし、このように犠牲を厭わなかった。

彼女の歩む道は...

観客にとって、本当に興味深いものに思えた。

...

撮影現場では、天野奈々のシーンはすでに半分以上終わっていた。この日、緊迫した夜の撮影の後、墨野宙の車が撮影現場に到着した。

天野奈々は時計を見て、メイクも落とさずに直接スポーツカーのドアを開けた。「もう深夜なのに、なぜ来たの?」

「君を迎えに来て、お祝いするためだよ」墨野宙はハンドルを握りながら言い、早く服を着替えるよう促した。

「お祝い?」天野奈々は疑問の表情を浮かべた。今は彼女の誕生日でもなく、墨野宙の誕生日でもない。何をお祝いするの?

墨野宙は笑って何も言わず、天野奈々が服を着替えるのを待ってから、彼女を撮影現場から連れ出した。

「こんな遅くては、外のレストランはもう閉まっているわ」

墨野宙は何も言わず、ただ彼女を家に連れて帰った。