第351章 なぜ天野奈々の結婚を阻止するのか?

深夜、宮殿のように豪華な天野家。

天野茜が客間に入ると、老執事が錦の箱を抱えて彼女の側に寄ってきた。「お嬢様、これは海輝グループからの贈り物で、会長宛てのものです。ですが会長は西山別荘にいらっしゃいますので…」

天野茜は海藻のような長い髪をかき上げ、瞳を後ろに向けた。「私に渡して」

「はい」老執事は錦の箱を渡して立ち去ろうとしたが、天野茜に呼び止められた。「木村おじさん、この件は祖父には内緒にして。年も年だし、こんなことで心配させたくないの」

「かしこまりました」老執事は恭しく答え、退いた。

天野茜は白い錦の箱を抱え、その上のM&Nのロゴを見つめ、白いリボンで結ばれた蓋を開けた。中から天野奈々と墨野宙の2ショット写真を見つけると、彼女の目は大きく見開き、瞳の奥に深い色が浮かんだ。

これは単なる贈り物で、墨野宙は2人の2ショット写真を1枚だけ入れ、残りは高価な手土産ばかりで、招待状としての意味合いはなく、ただの通知に過ぎなかった。

だから、天野茜が理解した意味は、2人が結婚を決めたということだった!

墨野家は本当にモデルを嫁に迎えるつもりなのか?

天野茜は錦の箱を投げ捨て、この情報を確認したかったが、名家のお嬢様である彼女は芸能界の人間と関わることを潔しとしなかった。池田ここはに聞いてみようか?

天野茜は執事に池田家の電話番号を探させ、すぐにかけた。電話の向こうの池田ここはも不思議に思っていた。前回天野家を訪れた時、天野茜が自分を好ましく思っていないことは明らかだったからだ。

「池田さん、もしかして芸能界に知り合いがいらっしゃいませんか?天野奈々と海輝の社長が結婚するという噂を確認できませんか?」

「結婚?」池田ここはは驚いた。「そんなはずありません。数ヶ月前まで、墨野宙は私と結婚するはずだったのに。どうして彼がモデルと結婚するなんて?」

「あなたと結婚?どういうこと?」

池田ここはは言葉に詰まった。もちろん、墨野宙がランダムに選んだことは言えなかったので、話は半分真実、半分嘘で、結局のところ、墨野宙は以前自分と結婚する予定で、日取りも決まっていて、二人で区役所まで行ったものの、その時自分が迷って後悔したため、結婚は一時保留になったという意味を伝えた。