第368章 能力の問題

これは天野奈々と墨野宙が結婚を公表した最初の夜であり、墨野宙はこの夜を、再び二人の新婚初夜として演出した。

家中に香りのよい薫香とキャンドルを灯し、天野奈々を白い花々の海に包み込んで……

「もしこれが夢だったら、永遠に覚めないでほしい」天野奈々は墨野宙の腕の中に座り、彼は力強い両腕で彼女を抱きしめていた。

「これを見て」墨野宙はファンのコメントを天野奈々に見せた。

「天野さん、墨野さん、今は新婚初夜なの？」

「ハハハ、天野さん、よくやったわね。天野家があなたを拒否しても、私たちの墨野宙があなたを選んでくれたわ」

「天野さん……いつ赤ちゃんを作って私たちに見せてくれるの？」

「ちょっとエッチな質問だけど、墨野社長の実力はどう？」

このコメントを見て、天野奈々の頬が赤く染まり、墨野宙の白いシャツに顔を埋めた。「最近の若い子たち、学校に行かないの？」

「君に聞いているんだよ、僕の実力はどうなのかって」墨野宙は天野奈々の耳元で低く笑った。

「そんな質問、どう答えればいいの？」天野奈々は墨野宙のシャツを掴んで、声を潜めて問い返した。

墨野宙は爽やかに笑い、天野奈々をきつく抱きしめながら、優しく言った。「『隠遁の達人』の撮影現場に行かせたくないな」

「私たち結婚を公表したけど……墨野家のご両親に会わなくていいの？」天野奈々は疑問に思い、墨野宙の腕から身を離して尋ねた。

「既に連絡は入れてある。習わしでは、まず女性側の家族の同意を得なければならない。だから彼らの要求は、天野家の承認を得たら、君を連れて帰るということだ」墨野宙は説明した。

「大丈夫よ……私が会いに行けばいい。天野家の承認なんて、そんなに重要じゃないわ……」

「でもそれは『隠遁の達人』の撮影に参加することの妨げにはならないよ」

天野奈々は頷いた。実際、自分が性急すぎたと感じていた。不倫相手の娘という立場が、おそらく墨野家の面目を潰してしまったのだろう。

「何を考え込んでいるんだ？君が思っているようなことは何もない。実は両親は海外にいるんだ。今度電話で紹介するよ。それに祖父は、僕が本当に結婚したと知って、次の墨野家の後継者のことを心配し始めたよ」

「どうして……こんなに長い間、彼らは一度も現れなかったの？」天野奈々は少し気になった。