第372章 全て危険な場所

正午十二時、『隠遁の達人』の制作発表会が東京で行われ、今回は全メインスタッフが揃い、伝説の国宝級変人俳優、北川東吾も出席した。

彼も三十代前半で、端正なルックスと男らしい雰囲気を持ち、『スパイ』『無法者たち』など多くの映画で印象的な演技を見せ、その累計興行収入は今でも誰も超えられていない。

彼は極めて控えめな性格で、変わった気質を持ち、その行動も非常に謎めいていて、撮影以外では、誰も彼のスキャンダルを見つけることができない。

もちろん、このような伝説的な俳優は脚本を選ぶだけでなく、共演者まで選んでいる。

そのため、天野奈々は北川東吾が一体どんな理由で、彼女の存在を認めたのか非常に気になっていた。

制作発表会は順調に進み、お香を焚き終わった後、天野奈々は振り返ると北川東吾を見かけ、礼儀として挨拶をしなければならなかった。

「ひがしさん、こんにちは」

「ああ」北川東吾は軽く頷き、天野奈々の傍を通り過ぎた。

天野奈々は彼の去り際を見つめながら、少なからず気まずさを感じていた。結局のところ、これから彼女は付き人のように北川東吾について回らなければならないのに、彼がずっとこんな素っ気ない態度なら、どうやって楽しく協力できるというのだろう？

遠くで、墨野宙の車が木陰に停まっていたが、彼は天野奈々の邪魔をしなかった。なぜなら、天野奈々がまもなく撮影隊と共に出発するという事実は変えられないからだ。

しばらくして、携帯に天野奈々からメッセージが届いた。短い一言だった：「行ってきます、心配しないで」

墨野宙は携帯を見つめ、数文字だけ返信した：「気をつけて」

実は、彼が言いたかったのは、君が出発したばかりなのに、もう恋しくなってきた……

ただ惜しくても、君を羽ばたかせなければならない……

……

一方、天野茜の一件は東京で大きな騒ぎとなっていた。メディアの誘導のおかげで、現在の東京人の目には、継母を虐げ妹を追い出す毒蛇のような存在として映っていた。世論戦を仕掛けるなら、彼女はまだまだ未熟だった。

そのため、天野茜はメディアに追い回される味を経験することになった。しかも、今日起きた出来事を老会長に知られないようにしなければならなかった。

さもなければ、老会長は必ず彼女の能力を疑い、執行役員にする計画を撤回するだろう。