第425章 そうすると怪我をするかもしれない!

七月下旬になって、『消えた肉親』の撮影チームは正式に撮影開始を発表した。元々、天野奈々は墨野宙の三十三歳の誕生日が過ぎてから現場入りするつもりだった。しかし、墨野宙はマネージャーとして、彼女の撮影現場でのイメージを考慮し、他のメンバーと同時に入るよう指示した。

「僕のそばにいたいのは分かるけど、その時は僕が迎えに行くから」墨野宙は彼女の髪を優しく撫でながら微笑んで言った。

「うん」天野奈々はつま先立ちして墨野宙の唇にキスをし、安心して撮影現場に向かった。

彼女にとって、この世で最も大切なのは夫だった。モデルも女優も、墨野宙が彼女の心の中で占める重要性の万分の一にも及ばなかった。

演技のために全力を尽くすことはできるが、墨野宙のためなら命さえ惜しくなかった……

柴崎知子は天野奈々と一緒に撮影現場に入り、その日は安全祈願の儀式を終えた後、奈々はホテルにチェックインした。彼女の撮影は翌日からだったので、墨野宙への誕生日プレゼントについて一生懸命考えていた。