第470章 私は怖がりなの

オフィスに入ると、天野茜は自然に手提げバッグを以前の机の上に置き、以前の椅子に座ろうとしたところ、夏目社長の秘書が突然彼女に言った。「天野さん、申し訳ありませんが、こちらがあなたの席です」

天野茜は隣の小さな作業スペースを見て、顔色が急に変わった。誰よりも彼女自身が、かつてその作業室の人々をどのように扱っていたかを知っていたからだ。

「どういうことですか？おじいさまは私を元の職務に戻すと言ったはずです」

「天野さん、今は天野家の経営は夏目社長の采配下にあります。天野会長はこの件を全て夏目社長に一任されました。ですので、ここがあなたの席となります。夏目社長は、あなたが妊娠中であることを考慮して、過度な仕事は避けたいとのことです。もし何か問題が起きたら、夏目社長は責任を負いきれないでしょうから」秘書は老会長と妊娠のことを持ち出して、天野茜に圧力をかけた。

彼女が子供を利用できるなら、墨野玲奈も同じように子供を利用できる。

天野茜は怒りを抑えながら、手提げバッグを持って秘書の席に座った。両手が震え始めたが、反論する術はなかった。

「天野さん、お仕事が楽しくなりますように」夏目社長の秘書は天野茜の背後で冷ややかな笑みを浮かべ、その後天野茜のオフィスを後にした。しかし、これは天野茜にとって最も辛いことではなかった。なぜなら、これから彼女は、かつて自分が侮辱し軽蔑していた上司と向き合わなければならないからだ……

秘書はオフィスに戻ると、この件を墨野玲奈に報告した。墨野玲奈は手際の良いキャリアウーマンらしく、天野茜に対する強い嫌悪感を目に宿しながら言った。「妊娠していなければ、生きた心地もさせないところよ。人でなしね……」

「各部署にその旨を伝えておきます」秘書は答えた。

「ええ」墨野玲奈は満足げに頷いた。

天野茜は生まれた時から大小姐として育ち、このような屈辱を受けたことがなかった。そのため、午前中だけで我慢できなくなり、老会長に電話して不満を訴えた。「おじいさま……あの方が私をどんな職務に就かせたか、ご存知ですか？」

「彼女から聞いているよ。私も適切だと思う」老会長は直接答えた。「今は妊娠中なんだから、時間つぶしの仕事で十分だ。気にしすぎるな。それに、私だって一番下から始めたんだ。それがいけないとでも？」

「もちろんそんなことはありません」