第506話 機密漏洩

ついにその名前を聞いた、墨野社長!

他でもない、天野奈々の夫であり、海輝の社長、墨野宙だ。

そう思うと、中村お母さんの心に寒気が走った。完璧だと思っていた計画が、すでに墨野宙に見透かされていたのだ。

そして中村家は墨野宙に弄ばれ、抵抗する力すら残っていなかった。もし墨野宙がこれほど恐ろしい人物だと知っていれば、天野奈々に手を出すことなど決してしなかった。天野奈々を陥れようとしてから今まで、これほどの時間が経過し、中村家は一歩一歩と墨野宙の仕掛けた罠に落ちていったのだ……

天野奈々と結婚してからは、墨野宙の妻への愛情は世間に知れ渡っていたが、それでも彼の冷酷無情な本質は変わらなかった。

彼の優しさは、最初から最後まで、天野奈々だけのものだった。

「中村夫人、警告しておきますが、中村家がまだ何か動きを……」

「絶対にそんなことはいたしません」中村お母さんは即座に手を振って態度を示した。墨野宙にこのように警告された以上、もう天野奈々に手を出す勇気などなかった。

「社長にとってこの世で最も大切な人は奥様です。しかし、あえて奥様を傷つけようとする者がいる。社長は常々おっしゃっています。社長本人に対する嫌がらせなら相手になりますが、奥様に手を出すなら、申し訳ありませんが、必ず相手を地獄に落とすと。よくお考えください」若い男は briefcase を手に立ち去り、中村お母さんは信じられない表情で取り残された。

ああ、なんということ……

今になって彼女は知った、墨野宙がいかに恐ろしい人物であるかを。

最も重要なのは、天野茜がまだ天野奈々と争おうとしていることだ。もし病院での出来事を墨野宙が既に知っているのなら、天野茜も必ず墨野宙の掌握の中にいるはずだ。それなのにまだ天野家の上位を狙おうとしているのか?

天野茜、お前がどんな目に遭うか見ものだ。

……

中村家の件の処理が終わった後、墨野宙は結果だけを聞き、すべてが順調に進んでいることを知ると、若い弁護士にただ一言だけ告げた。「中村家の株式を手に入れたら、中村家のライバルに売却しろ」

この苦しみで、中村家の者たちを完全に発狂させてやれるはずだ!

彼と天野奈々のあかちゃんのために、彼は徹底的な殲滅は避けた。

墨野宙は、この件について、すでに余地と底線を残していると考えていた……

余地を残している……