第570話 動画

動画!

冬島香は幾度も言葉を重ねて、ようやく最も重要な点に辿り着いた。そのオランダ人従業員の動画について!事の経緯を記録した動画だ。

しかし、新井光は海輝が何の証拠も出せないと確信していた。もしそうでなければ、墨野宙はとっくに公表していたはずで、彼女が好き勝手に振る舞う機会など与えなかったはずだ。

「山田様は海輝と共にこの動画を迎え入れると仰っています。なぜなら、この世界には真実があると信じているからです!」

新井光の代理人弁護士がこう言い終えると、冬島香だけでなく、その場にいた多くの人々が嘲笑うような表情を浮かべた。

真実だって!

「大物の愛人が、私たち一般人に真実を語るなんて笑わせないでください」冬島香は痛烈な一言で相手を窮地に追い込んだ。

相手が黙り込んだのを見て、冬島香は再び笑みを浮かべた。「山田様がそれほど自信があるのなら、一緒に見てみましょう。誰が事実を歪めているのか、誰が白を黒と言い張っているのか」

「ただし、その代償は山田様にはお重すぎるかもしれませんけどね!」

言い終えると、冬島香は振り返り、背後のスクリーンを確固たる鋭い眼差しで見つめた。

すると、スクリーンには揺れる映像が映し出された。ドアの隙間から盗撮されたものらしく、新井光の全身は映っているものの、天野奈々については膨らんだ腹部しか映っておらず、全体像は...あまり鮮明には撮影されていなかった。

それでも、この動画の冒頭から天野奈々の声は聞き取れ、天野奈々と新井光の口論、そして新井光がボディーガードに天野奈々への暴行を命じる強圧的で陰険な様子が映っていた。

新井光はボディーガードに天野奈々の服を剥ぎ取らせ、彼女の腹の中のあかちゃんを始末するよう命じ、ただし命だけは取るなと!

これはオランダ人労働者が提供した一部の映像で、もちろん彼は複数の映像を撮影していたが、海輝にとってはこの部分を公開するだけで十分だった...

動画は誰かがクイーンズホールの扉を叩く瞬間に突然終わった。その時、墨野宙が警察を連れて現れたため、労働者はそれ以上撮影を続けなかったが...すべての事実は明らかになった。動画には誰が嘘をついていたのか、誰が...

誰が誰を侮辱し、誰が天理に背く行為を傍若無人に行っていたのかが、はっきりと記録されていた。

ついに真相が白日の下に晒された!