「おじいさまはもう私のおじいさまではないのよ」と墨野宙は妻を見つめながら、やや嫉妬気味に言った。
「おじいさまはあなたを何年も見てきたでしょう?今は私が珍しいから可愛がってくれているだけよ。このお腹の子が生まれたら、私なんて見向きもしないわ」と天野奈々は思わず微笑んで、「それに、私の愛情だけでは足りないの?」
墨野宙は答えず、ただ天野奈々の額にキスをして、彼女を抱きしめたまま眠りについた。
うとうとしている間、天野奈々は墨野宙の体が熱くなっているのを感じ、すぐに起き上がって尋ねた。「どうしたの?」
墨野宙はベッドの頭板に寄りかかり、首を振った。「気にしないで、早く寝なさい」
実は天野奈々にはわかっていた。この男は彼女のために長い間禁欲生活を送っていた。以前はこのような骨の髄まで染みわたる快感を経験したことがなかったからだが、今は妻が妊娠中で過度な行為ができない。男なら誰でも耐えがたいものだろう。
「私が...手伝おうか?」
「君に無理させたくない」と墨野宙は自制しながら言った。「言うことを聞いて、早く寝なさい...」
「実は、前に医者に聞いたの。あかちゃんはもう安定期に入ったから...そんなに我慢しなくてもいいのよ」天野奈々は墨野宙の胸に這い上がり、信じられないほど優しい声で言った。「私は大丈夫...」
墨野宙は目を閉じ、最後の思考の葛藤をしているようだった。しかし...妻と一つになる快感を思い出すと、思わず目を開いた。天野奈々はその隙に、彼のほくろのある耳たぶを口に含んだ。今度は誘惑的な声で「私もあなたが欲しい...」
この言葉以上に情欲を掻き立てるものはなかった。
墨野宙にもわかっていた。この人生で、彼は永遠に天野奈々から離れられない。四字熟語で言うなら、食髄知味。
すぐに、白いナイトガウンは静かに床に投げ捨てられ、暗闇の中で二つの体が絡み合った。いつものように、お互いの最も深いところまで達して初めて、彼らの間の絆と縁がいかに切っても切れないものかを知ることができた。
数日後、墨野宙は会社の仕事を片付けてから、妻とともにアメリカへ向かった。
天野奈々が妊娠中のため、今回の旅行では墨野宙は一層慎重で、ボディーガードを十数人も配置した。