第586章 授賞式

「欲しいの?ね?」墨野宙は彼女を抱き上げ、優しくベッドに寝かせ、右側から彼女の上半身を固定した。

天野奈々は真剣な眼差しで墨野宙を見つめ、特にこんな時は、彼への深い愛と執着を少しも隠さなかった。「欲しい...ずっと欲しかった、いつも欲しかった。」

墨野宙は天野奈々の耳元の髪を優しく払い、そのままシャツを引き裂いた。散らばるボタンも気にせず、逞しい体を起こすと、こんな時でさえ、威厳のある帝王のような姿を崩さなかった。

天野奈々は相変わらずの天野奈々で、妊娠していても完璧さは損なわれず、むしろより魅力的になっていた。

天野奈々は妊娠しているため、激しい動きはできない。だから、絡み合う体は、ゆっくりと少しずつ擦り合わせるしかなかった...

「ドレス...」

「私の愛撫が足りないのかな?まだドレスのことを気にかける余裕があるなんて?ん?」

...

この数日間。

天野茜は自分の行動が墨野宙に監視されていることを全く知らなかった。彼女が唯一忘れられなかったのは、恐怖だけだった。

特に田中翠と新井光の末路を見て、この瞬間、彼女の頭の中では発狂したように、絶対に隠れなければならない、天野奈々に見つかってはいけないという思いだけがあった。実際、天野奈々は授賞式のために、まだ彼女を処分する時間が取れていなかっただけだった。

彼女は天野奈々より先に妊娠していたので、お腹は天野奈々より大きかった。もちろん、彼女の生活は想像していたほど良くはなかった。以前の贅沢な生活のせいで、たった200万円では彼女の派手な生活には足りなかった。隠れていても贅沢な食事を忘れなかったため、これが陸野徹の捜索に多くの有利な手がかりと条件を与えることになった。

この時、彼女は人里離れた小島に隠れていた。もちろん、最近の浪費で、高級ホテルから一般住宅地に引っ越さざるを得なくなっていた。安全が保障されていないため、時々地元のチンピラに嫌がらせを受けていた。しかし、天野奈々と墨野宙に見つかるよりは、このような不安定な生活に耐えることを選んでいた。

さらに滑稽なことに、まだ形になっていた彼女の住まいで、ベッドの下から大量の偽札を見つけ、少しでも生活を楽にするために、その偽札を持って、特に年配の男性や女性を騙っていた。発覚しにくいからだった。