第573章 あなたには私を追い出す権利はない!

近藤邸。

現在の時刻は午後五時。

二人の女性が居間に座って近藤とうさんの帰りを待っていた。これから、また一つの大きな家族の争いが始まることは間違いない……

十分後、近藤とうさんは書類カバンを持って居間に入ってきた。おそらく近藤おじいさまが去ったという知らせを聞いたからか、彼の足取りはいつもより軽やかだった。書類カバンを置き、上着を脱ぎながら、娘の近藤青子の存在など目に入れず、すぐに田中翠を抱きしめ、人目もはばからずキスを始めた。

「やめて、あおいがいるわ」夫の愛情が自分にあることを知っているため、田中翠は照れ臭そうな演技をしながら、実際には近藤青子が目の前にいて、過去の清算の時が来たことを暗に示していた。

近藤青子は最初から最後まで冷ややかに二人を見つめていた。まるで田中翠のこういった芝居は見慣れているかのように。ただし、これまでは田中翠の虐めと中傷を黙って受け入れてきただけだった。

「お父さん……」

近藤青子は感情を込めずに静かに呼びかけた。しかし、近藤とうさんは近藤青子が許しを乞うているのだと思い込み、田中翠の肩を抱きながらソファに座り、顎を上げて近藤青子を見下ろした。「今になって私に頼むつもりか?」

近藤青子は近藤とうさんの怠惰な表情を見つめたまま、返事をしなかった。

「あおい、言わせてもらうけど、父親と祖父のどちらが大切かをはっきりさせなさい。おじいさまがどんなに可愛がってくれても、結局は年老いた人なのよ。一生あなたを守ってはくれないわ。だから、父親と仲良くするべきなのに、どうして父と祖父の間を引き裂くような真似をするの?父子の仲を裂くなんて、本当に良くないわ……」

「不肖の子!まったくの厄介者め!それで、いつになったら息子を産んでくれるんだ?」近藤とうさんは近藤青子を怒鳴りつけた後、質問するような目で田中翠を見つめた。「どうせ今日は大騒ぎになったんだから、この機会に家で妊娠の準備をしっかりしたらどうだ」

「私の財産を継ぐ者が必要なんだ」

この言葉を聞いて、田中翠は嘲笑うように近藤青子を一瞥してから尋ねた。「じゃあ、あおいはどうするの?」