第573章 あなたには私を追い出す権利はない!

近藤邸。

現在の時刻は午後五時。

二人の女性が居間に座って近藤とうさんの帰りを待っていた。これから、また一つの大きな家族の争いが始まることは間違いない……

十分後、近藤とうさんは書類カバンを持って居間に入ってきた。おそらく近藤おじいさまが去ったという知らせを聞いたからか、彼の足取りはいつもより軽やかだった。書類カバンを置き、上着を脱ぎながら、娘の近藤青子の存在など目に入れず、すぐに田中翠を抱きしめ、人目もはばからずキスを始めた。

「やめて、あおいがいるわ」夫の愛情が自分にあることを知っているため、田中翠は照れ臭そうな演技をしながら、実際には近藤青子が目の前にいて、過去の清算の時が来たことを暗に示していた。

近藤青子は最初から最後まで冷ややかに二人を見つめていた。まるで田中翠のこういった芝居は見慣れているかのように。ただし、これまでは田中翠の虐めと中傷を黙って受け入れてきただけだった。