第623章 罠を仕掛けるつもり?

しかし、今回の広報活動は、海輝とは全く関係がなかった!

海輝は何の行動も起こしていなかったのに、ネット上では既に天野奈々の名誉回復が行われていた。これはファンの仕業のように見えたが……山本修治はこの事件の経緯を注視していた。墨野のお父さんは、事態をこれほど大きくしてしまったが、実は解決は一言で済む問題だったということに気づいていなかったようだ。

あの夫婦は、これは全て墨野宙の手配だと思っているのだろうか?

しかし墨野宙自身は、この件が海輝とは全く無関係だということをよく分かっていた。

山本修治は投稿者のアカウントを突き止めた。なぜなら、噂には必ず根拠があるはずだと考えたからだ。これが海輝の広報戦略でないのなら、他社が天野奈々を助ける理由など全くないはずだった。

「墨野社長、これが天野奈々の名誉を回復した人物の投稿です。ご覧ください」山本修治は携帯を墨野宙に差し出した。

墨野宙は顔を上げたが、携帯は受け取らず、淡々と言った。「既に見た……どう思う?」

「私は……この投稿をした人物は、お母様の旧知の方で、その背後には私たちの想像を超える秘密が隠されているのではないかと思います。明らかに、この旧知の方はお母様を標的にしています。表面上は天野奈々の名誉回復のように見えますが、最後の一文を見てください……」

「私のものを取り戻すとはどういう意味だ?」

「これは明らかに宣戦布告です」

「既に投稿者の調査を依頼している」墨野宙は特に動揺した様子もなく言った。

「やはり早くからご疑念があったのですね」山本修治は微笑んで携帯をポケットに戻した。そうだ、こんな明白なことに気づいた自分でも分かることを、墨野宙が見過ごすはずがない。「もし本当に何か真相が明らかになって、それが良くないことだったら?」

「間違った行為には、相応の代価を払わせる!」

こんな単純な道理に、何か理解し難いことがあるだろうか?

「ただの悪戯であることを願います」山本修治はため息をつきながら言った。「そうでなければ、この件は厄介なことになりますよ……」

なぜなら、椛木千鶴、墨野宙の母親に関わることだからだ。