「はい、墨野夫人」
墨野宙は既に海輝へ行っていたので、家には天野奈々一人しかいなかった。もしその女性を家に連れて帰るとしたら、何か企みがあった場合、妊婦の彼女では対処できないだろう。そのため、天野奈々は面会場所を庭園に設定した。
この時、天野奈々は助けなくても良かったのだが、彼女は打算的な人間ではなかった。
普通の人が助けを必要としているなら、断ることはないだろう。まして、安藤皓司との関係もあるのだから。
天野奈々が冷酷になるのは、敵に対してだけだった。無実の人に刃を向けることはなかった。
それも女性たちが天野奈々を好む理由の一つだった。
すぐに、女性は別荘の中心にある庭園エリアに到着した。天野奈々もコートを羽織り、大きなお腹を抱えながら庭園にやってきた。二人が会うと、天野奈々は疑問に思いながら女性を見つめた。もちろん、この距離では何か問題があることに気付かないはずがなかった。