第684章 彼女はこんなに早く寵愛を失うの?

最近、海輝で最も輝かしい存在といえば、柴崎小百合以外にいないだろう。

楽曲の売り上げは首位を獲得し、脚本の改編も大ヒットを記録。さらに抜群のバラエティセンスも相まって、柴崎小百合の名は東京で瞬く間に注目を集め、音楽界からは百年に一人の天才とまで称されるようになった。

海輝はすでに彼女のためのレコーディングを進め、初のEPをリリースする準備を整えている。近い将来、その人気は計り知れない高みに達するだろう。ただし、唯一残念なのは、話題性に欠けることだ。

人気は高いものの、天野奈々のような印象的な存在感には及ばない。

そのため、天野奈々を超えることは、今のところまだ難しいだろう。

椛木千鶴の一件以来、天野奈々はさらに外出を控えるようになり、重要な活動であっても完全に避けている。お腹の子供のことを考えてのことだ。

天野奈々は依然として、離間を図った人物の調査を続けているが、椛木千鶴でさえ特定できなかった相手について、どこから手がかりや情報を得ればいいのだろうか。

そして、ここ一両日、墨野宙はますます早朝から深夜まで仕事に追われ、二人は顔を合わせることすらできない。ましてや内緒話などできるはずもない。天野奈々が目を覚まし、墨野宙と少し話したいと思っても、疲れ切った彼の顔を見ると、声をかける勇気が出ない。

石川麗はそんな様子を見かね、天野奈々に尋ねた。「墨野さんがこんなに忙しいのに、あなたは不満を言わないのね。彼があなたと過ごす時間が少なすぎると思わない?」

キニーネの影響で最近は基礎的な医学書を読んでいた天野奈々は、石川麗の質問に首を振って答えた。「不満を言う理由なんてないわ。私は誰よりも彼のことを理解しているから」

「でも、もし彼が本当にあなたに隠れて何かをしているとしたら?最近、隣の家によく行っているみたいだけど、知らなかった?」石川麗は意味深な口調で言った。「私も朝方見かけただけだけど、彼は海輝じゃなくて隣の家に行ったわ」

天野奈々は医学書を置き、首を伸ばして外を見た。「そんなはずないわ」

「よかったら、一緒に見に行ってみない?もしかしたら、彼に会えるかもしれないわ」