第667章 私たちに何か問題があった？

「柴崎小百合！」

「何社もの粉ミルク広告会社の知り合いから聞いたけど、あなたが第一候補に挙がってるわ。喜ぶべきよ、すぐに高額なアンバサダー料が手に入るわ」柴崎小百合は陸野徹の警告を完全に無視し、顎に手を当てながら天野奈々に言い続けた。「演技の方は…すぐにママ役しかできなくなるわね。どうするの？もう私の頭の中であなたが髪を結い上げて、子供たちを叱る姿が浮かんでくるわ」

「知ってるわ、天野奈々は性格が良いことで有名だから、今日私が本当のことを言っても、私に仕返しはしないでしょうね？」

「私たち、何かあったかしら？」天野奈々は理解できず、突然の挑発の理由を尋ねた。

「NO、私たち今まで会ったことないわ」柴崎小百合は肩をすくめて答えた。「ただ私は一番になることに慣れてるから、海輝に来ても二番目なんて甘んじないわ。これは予告みたいなものよ」

「柴崎さん、うちの奥様は業界歴十年ですよ…あなたは新人に過ぎません」

「十年も経ってまだ新人演技賞一つだけなの？」柴崎小百合はプッと笑い出し、すぐに二人に手を振った。「早く帰りなさいよ。もう八ヶ月のお腹で、見てるこっちが辛くなるわ。墨野社長の奥様だから一番いいものを持っていくのは当然でしょうけど、私は自分の実力で、あっという間にあなたを追い越すわ」

陸野徹は天野奈々を心配そうに見つめた。彼女が怒るのではないかと恐れていたが、天野奈々の穏やかな表情は、たとえ怒っていても顔には出さないことを物語っていた。

「今日の言葉、覚えておいてね…」

「はっきり覚えてるわ」

天野奈々は柴崎小百合を頭からつま先まで深く見つめた。確かに外見的な条件は悪くない。でも…芸能界は、気迫があるだけでは通用しない。

柴崎小百合も実は内心では不安だった。口では堂々と言い放ったものの、やはり磐石の天野奈々を前にしては、簡単な言葉で動揺させられるような相手ではなかった。

その後、天野奈々は車に乗り込み、陸野徹は運転席に座り、二人は地下駐車場から直接出て行った。残された柴崎小百合はタバコを取り出して火をつけた。「面白い女ね。でも残念…もうすぐ出産だわ」

……

「奥様、柴崎さんのことは気にしないでください。確かに才能はありますが、傲慢すぎます」