第699章 死闘の果てまで!

彼は清水星華のことなど気にしたくなかった。そうでなければ、安藤皓司が楽になってしまうではないか?

……

最近、天野奈々の新作映画『消えた家族』が公開間近となり、海輝ビルの巨大スクリーンでは、この映画の30秒予告編が繰り返し放映されていた。

通行人が次々と振り返って見ており、多くのファンは以前から見ていたものの、天野奈々にはその瞬間に物語の世界に引き込む魅力があった。冷酷な用心棒という役柄は現実離れしているはずなのに、彼女が映画の中で失踪した夫を探す姿は、とても現実味があった。女性たちは、このような状況に共感し、心を痛めやすいようだった。

当初は夏季公開予定だったが、最近起きた出来事が多すぎて、世間の反応が消極的だったため、墨野宙は直接映画の公開時期を前倒しし、世間の注目を映画に向けようとした。

これは文芸シーンもアクションシーンも見どころのある映画で、海輝も大きな期待を寄せていた。しかし、4月21日公開予定で、天野奈々主演という作品なので、上映枠の配分は目立つはずだったのに、ある映画館は、この映画の上映を全く予定していなかった。

それは……帝都シネマだった!

新興勢力ながら、その急成長ぶりは人々を驚かせていた。

墨野宙は山本修治に対応を任せたが、相手側から秘書を通じて連絡があり、先方の若旦那が墨野夫妻を昼食に招待したいとのことだった。

現在、天野奈々は妊娠9ヶ月で、普段から動くのを好まない上に、まして見知らぬ人からの招待など受ける気にはなれなかった。

「ただの食事にお招きしているだけです。この私があなた方夫妻を困らせるとでも?それとも海輝は...調和のとれた映画業界を望まず、帝都のような大きなパートナーとの協力を考えていないということでしょうか?」

天野奈々は金井和夫のこの言葉で窮地に追い込まれた。確かに、海輝には株主もいて、彼女が行かなくても深刻な結果にはならないが、海輝の株主の心証を悪くすることは確実だった。

しかし、相手は明らかに善意からの誘いではなかった。

「では会おう」墨野宙はそう答えた。

二日後、帝都の系列ホテルで、金井和夫は墨野宙と天野奈々を招き、眺めの良い最上階で昼食を共にした。