第703話 混迷を深める

「証拠?」柴崎小百合は自宅のソファに座り、のんびりとコーヒーを飲みながら言った。「海輝がどんな証拠を出せるのか、私も知りたいものね!」

この件について、彼女は完璧にやり遂げたと自負していた。少なくとも、素人の目には何の不自然さも見出せないはずだった。

残念なことに、彼女が相手にしているのは墨野宙と天野奈々だった。

『追跡者』の原作者は不安になり、柴崎小百合に助けを求める電話をかけてきた。しかし、柴崎小百合は非常に冷静に相手を安心させた。「心配いらないわ。海輝は何の証拠も出せないはず。あなたがしっかり否定し続ければ、海輝は私たちに何もできないわ」

「でも...これは私の手に関わることで...」

「でもも何もないわ」

相手は背後にいる人物が柴崎小百合だということを知らないため、ただ焦るばかりだった。これも柴崎小百合の巧妙な策で、彼女は自分を陰謀の渦中に置くことは決してしなかった。たとえ後で事実が暴かれても、彼女は無傷で逃げ出せる。これらの汚い事とは一切関係ないと言える立場を確保していた。

そして彼女は確信していた。これは全て海輝の広報戦略に過ぎない、墨野宙のいつもの手法ではないかと。

しかし原作者はかなり動揺していた。結局...自分の両手を賭けているのだから。もし海輝が本当にいわゆる証拠を出してきたら、どうすればいいのか?

今、外界は事態の進展に非常に注目している。特に海輝が関連する証拠を出せるかどうかについて。『追跡者』の契約書でさえ動かぬ証拠とは言えないのか?海輝はそれ以上の確実な証拠を出せるというのか?

笑わせる!

そんなはずがない!

誰もが夜7時を待ち望んでいた。特に『消えた親族』の上映に対して共同で抗議している脚本家や原作者たちは、義憤に駆られ、胡田先生を生きたまま食い千切りたいほどだった。もし海輝が本当に証拠を出してきたら、彼らの面子は...

どこに置けばいいというのか?

...

時間は一分一秒と過ぎていき、とても遅く感じられたが、それでも時は迫っていた。

この時間帯において、海輝が証拠を出せるかどうかほど、視聴者の注目を集める出来事はなかった。

「海輝さん、もういいから早く出してよ!」

「海輝、私たちを弄ばないで。もう1分過ぎてるじゃない」

「約束の証拠はどうしたの?ただのハッタリ?」