「また彼女に解決されてしまった。この役立たずども」柴崎小百合は家でニュースを見ながら、手に持っていたワインの入ったグラスを床に叩きつけた。心の怒りを発散させようとしたようだが...血のような赤い液体が飛び散るのを見て、柴崎小百合はさらにイライラが募った。
彼女の本意は天野奈々の映画の公開を阻止することだったが、思いがけず、失敗しただけでなく、天野奈々の宣伝を無料でしてしまうことになった。
明日『消えた家族』が公開される。どれほどの大ヒットになるかわからない!
柴崎小百合は自分が失敗しただけだと思っていたが、実は天野奈々に目をつけられていたことに気づいていなかった。今度は逆にゲームを仕掛けられることになりそうだった。
……
『追跡者』の原作者は完全に姿を消した。おそらく海輝に追及され、両手を切り落とされることを恐れて、身を隠したのだろう。全く姿を現す勇気がなかった。
しかし、海輝が人を探すのは簡単なことで、特にネット上の各界の人々の協力のもと、すぐに『追跡者』の原作者は海輝に見つかった。
天野奈々はそんな人間のクズに会う価値もないと思っていたが、人を見つけた後、山本修治に30分以上も電話をかけた。具体的に何を話したのかは、墨野宙以外には誰も知らない。
すぐに、その作者は海輝の応接室に招かれた。作者は十分な心の準備をしていたつもりだったが、実際に海輝のテリトリーに入ると、やはり全身が震えてしまった。
山本修治がわずかな時間を割いてこの恥知らずな人間のクズに会いに行ったのは、他の人にこの件を任せては、彼も天野奈々も安心できないからだった。
「私は海輝の副社長の山本修治です」
海輝の応接室に入って、原作者に向かって言ったが、相手に右手を差し出すことはなかった。明らかに、相手を全く眼中に入れていなかった。
「は...はい、存じ上げております」その男は24、5歳で、痩せた体型で、短い髪をしており、一見大学生のように見えたが、誰も、このような人物が東京芸能界にこれほどの騒動を引き起こすとは想像もしていなかった。