第756章 ついに墨野社長も出来ないことがあった

その後、海輝は『法醫學皇妃』の男性主役オーディションのニュースを発表した。墨野宙は海輝の社長だけあって、目の付け所が鋭く正確だった。北川東吾や森口響といった面々を除けば、東京で最も反響を呼んだのはこの二人で、一人は中村ほし、もう一人は片山涼介だった。

二人とも新しい映画帝王の有力候補だった。

そして墨野宙の任務は、その中から最も適任者を見つけ出すことだった。

もちろん、墨野宙の心の中では、実は中村ほしの方が好ましかった。外見よりも実力を重視する彼だったが、もし片山涼介が天野奈々との共演シーンで演技力を発揮したら、どうなるだろうか?

しかし実際のオーディション当日、中村ほしと片山涼介は、どちらも会場に現れなかった。

一人はスケジュールが既に埋まっているという理由で海輝からの依頼を断り、もう一人は体調不良で半年の休養が必要だという理由だった。

二大有力候補が、それぞれ言い訳をして海輝のオファーを断ったのだ!

マネージャーが海輝に説明に来た時、どちらも非常に申し訳なさそうだった。「中村ほしは本当にスケジュールを動かせないんです。大変申し訳ありません、陸野秘書。ほしくんは本当に出演したがっていたんですが、アーティストとして信用を守らなければならず、既に約束した作品を断るわけにはいかないので...」

「陸野秘書、これが涼介の健康診断書です。過度の撮影で胃臓と肝臓がもう限界なんです。そのため、会社が半年の休暇を与えることにしました。何といっても健康が一番大切ですから、本当に申し訳ありません。」

この二人がどんな理由で海輝の作品まで断るのか分からなかったが、陸野徹は彼らの言い訳を暴露することはしなかった。誰にも彼らの背後にある事情は分からないのだから。

「社長、基本的にはこういう状況です。二人のマネージャーが前後して海輝に直接謝罪に来ました。様子を見る限り、確かに海輝を怒らせたくないが、やむを得ず断らざるを得なかったようです。」陸野徹は資料を墨野宙の机に置きながら続けた。「これらの資料は確認しましたが、確かにマネージャーの言う通りです。ただし、私たちも知っているように、これらは意図的に偽装することも可能です。」

「新しい俳優リストを作成して持ってきてくれ。基準を下げて。」墨野宙は顔も上げずに言った。