第819話 お前一人で?単独で戦うつもり?

翌日、浅川司は約束通りスタースタジオに向かった。高価な都心に位置する半フロアのスタジオは、この場所に潜んでいた。

もちろん、天野奈々はそこにはいなかった。彼女は自分の名義でこのようなスタジオを開いたにもかかわらず、このような場所に現れることはないようだった。

浅川司はスーパースターの環境を確認し、このスタジオが一般的な芸能事務所と同様に設備が整っていることに気づいた。

天野奈々は本気のようだ。

中村さんは自分のオフィスで、現在、浅川司の初期の仕事を主に担当していた。

「まだ慣れていないようね」中村さんは自分のオフィスチェアから立ち上がり、ソファまで歩いて浅川司の向かいに座った。

「少しね」

「あなたは今、私たちスーパースターの芸能人よ。まず視野を広げなきゃ。本当に自分は三千万円の価値しかないと思っているの?」中村さんは浅川司にきっぱりと尋ねた。「私たちと契約した以上、スーパースターの予定通りに活動しなければならないわ。以前のSMYのメンバーたちが、あなたのライバルだと思わないで……」

「彼らの視野の狭さが、彼らを遠くまで行かせないわ」

「じゃあ、私のライバルは?」

「あなた自身よ」そう言って、中村さんは台本を浅川司の前に置いた。「まずこの台本を読んでみて」

浅川司は自分にとって非常に馴染みのないものを見て、思わず眉をひそめた。「演技なんてできない……ましてや、こんなイケメン役なんて」

「アイドルドラマは、今の時代、最も早くファンを集められる方法よ。演技力なんて必要ないわ。このドラマでは、あなたらしく演じるだけでいい。浅川司、あなたは今の立場をまだ理解していないようね。選択肢はないわ。私たちの指示に従うしかないの」中村さんは浅川司に真剣に言った。

「歌が好きなのはわかるけど……でも、あなたたちのグループは、デビューしてからずっと、ゴシップニュースを起こしたり、小さなステージに立ったりする以外に、何か成果を出せたの?今は歌える人があまりにも多すぎるわ。農家も、掃除夫も、ちょっと手を加えれば同じようにステージに立てるのよ」

「グループでさえ完全にブレイクできるかどうかわからないのに、あなた一人で?単独で戦おうっていうの?」

浅川司は心の中で納得がいかなかったが、最終的に台本を持ち帰った。