第806話 奈々、やっぱり凄いね

近藤好子は撮影現場で、すべてのシーンを通常通り撮影し、そして拍手の中でついにクランクアップした。一方、天野奈々のシーンはまだ数千カットも残っていた。

加藤静流は近藤好子を調べたが、彼女に特別な動きは見られず、時々近くの診療所で頭痛薬を受け取るだけだった。

「もしかしたら、私たちが考えすぎなのかもしれない」と加藤静流は言った。

天野奈々は暫く黙っていたが、心の中で考えていることは単純ではなかった。「監督との約束で、あの時から彼のプライベートな生活を忘れることになっているけど、近藤好子に気をつけるように注意した方がいいわ」

「そういうことは、面と向かって言うのは難しいわね」と加藤静流は答えた。

近藤好子のクランクアップ後、監督は約束通り台本を彼女に渡した。「台本に印がついている人に連絡すれば、役を手配してくれるはずだ」