第804章 あなたは誤解したけど、私は誤解していない

「天野奈々、お前は本当に私を怒らせた」近藤好子は怒りに満ちた表情で、天野奈々の部屋に向かおうとしたが、奈々はすでに墨野宙と一緒にいて、二人はホテルの部屋から出てきて、どこかに行こうとしているところだった。

これは好都合だ……

この墨野社長は、自分が寝取られていることを知ったら、どんな気持ちになるのだろう。

そこで彼女は足早に、階下に向かおうとしている夫婦に追いつき、天野奈々に言った。「奈々さん、お話があるのですが、少しお時間をいただけませんか?」

しかし、天野奈々はその申し出を断り、近藤好子に直接答えた。「私には夫に隠すことなど何もありません。ここで話してください」

「本当にそれでいいんですか?」近藤好子は危険な口調で天野奈々に尋ねた。「あなたの恥ずかしい行為を墨野社長に話しても構わないんですか?」

「どうぞ、話してください」天野奈々は直接近藤好子に答え、もちろん、その瞳にも危険な光が宿っていた。

近藤好子は天野奈々をじっと見つめ、彼女が本当に恐れていないことを確認すると、ポケットから携帯を取り出し、写真を開いて墨野宙に見せた。「墨野社長、あなたの隣にいるこの女、あなたが大切にしている奥様は、実は...ずっとあなたを裏切って不倫をしていたんです!」

言い終わった後、近藤好子は天野奈々の末路を見守ることにした...だって、この男は墨野宙だ。天野奈々が平手打ちを食らわないはずがない!しかし...

墨野宙は近藤好子を見つめ、その眼差しには極めて冷たい光が宿っており、一言も発せず、ただ近藤好子を見つめていた。

「墨野社長?」

墨野宙は携帯を受け取り、写真を一瞥した後、近藤好子に返した。「次から私の後ろ姿を勝手に撮らないでください。あなたの撮影技術は本当に下手ですから」

この言葉を聞いた後、近藤好子は驚愕して墨野宙を見つめた...

「これがあなたの証拠?」

近藤好子はようやく事の真相を理解した。あの日、天野奈々の部屋から出て行った人物は墨野宙だったのだ。彼女は天野奈々が不倫をしていると思い込み、墨野宙の後ろ姿を撮影して、天野奈々を脅していたのだ!

近藤好子は突然、異常な恥ずかしさと怒りを感じた。「申し訳...申し訳ありません。誤解していたようです」