第827章 私は娘が欲しい

中村さんには浅川司を指導する十分な能力がありましたが、加藤静流の経験はまだ浅かったのです。

彼女は天野奈々の後ろでの統括と指導を必要としていました。さらに、これはスーパースターの存続にかかわる重要な問題だったので、天野奈々は今後、この少女に重点を置くことになります。

浅川司はすぐに中村さんからスタースタジオが新しいタレントと契約を結んだことを知りました。しかも異性であり、歌手だったので、つまり二人の間には何の競争関係もありませんでした。なぜなら、それぞれが活動する分野は、当面の間、重なることはないからです。

実際、彼は心の準備はできていました。スーパースターが発展するには、彼一人だけと契約するわけにはいかないことは分かっていたのです。しかし、スーパースター全体が彼の気持ちを十分に配慮してくれているのが分かりました。

「浅川君、スーパースターが君と契約した以上、絶対に見捨てたりしないわ。その点は安心して」中村さんは撮影現場に直接来て、浅川司を安心させ、監督を見ながら浅川司の耳元で助言しました。「この監督さんは義理堅い良い人よ。もっと親しくなるといいわ」

浅川司は疑問に思いましたが、うなずきました。中村さんの言葉には、表面的な意味以上のものがあることを知っていたからです。

「今のあなたの課題は人脈を作ることよ。甘い言葉は必要ないわ。真心があれば十分。天が落ちてきても、私たちスーパースターが支えるから!」

浅川司は今、中村さんの言葉の意味を理解できませんでしたが、すぐに天野奈々の助言が、彼のスターロードにとって完全な転換点となることを知ることになります。

……

墨野宙はすぐに、天野奈々が新しいタレントと契約を結び、彼女をJourneyというオーディション番組に参加させる準備をしていることを知りました。

認めざるを得ませんが、天野奈々のこの采配は理にかなっていました。

「もしその子を優勝させることができれば、彼女は直接海輝に入れるよ」墨野宙は天野奈々にそう言いました。

「私は手心を加えてほしいわけじゃないの……」

「手心を加えるわけじゃない。今回の大会は海輝がスポンサーで、主催者と契約も結んでいる」墨野宙は優しく答えました。「もし本当に彼女を優勝させることができれば、海輝入りは正当なものになる」