第812章 真実を話しても誰も信じない

「過激とはどういうことでしょうか?」天野奈々は警察官に問い返した。

警察官は天野奈々を深く見つめ、この伝説的な女性の目から放たれる光は、特に率直で、特に人を納得させやすいと感じた。

「それと警部、近藤好子の芸能事務所は隠していましたが、海輝の強力な情報網で、近藤好子には精神病歴があることが分かりました。その方面も調べてみてはいかがでしょうか」

警察官は頷き、天野奈々からまた一つの重要な突破口を得たと考えた。

怒りや憤りで自ら極端な行動に走る人は、偏執的で正常な人とは思えない。

「外の噂で辛い思いをしているでしょう?」若い警察官は突然話題を変えた。「今の世の中はこんなものです。本当のことを言っても誰も信じず、嘘を言えばかえって拍手喝采を浴びる。こんなシンプルな展開は誰も見たがらず、みんなもっと複雑な展開を求めているんです」

「もう慣れましたよ」天野奈々は微笑みながら答えた。

「分かりました。警察は早急に事件の真相を究明し、あなたの名誉を回復します。ただ正直に言うと、人が死ぬ間際にあなたを恨んでいると叫んでいたことは、他人から見れば確かに疑わしく映ります。それが外部でこれほど大きな反応を引き起こした理由です」警察官は調書を取り終え、ため息をついた。「こんな事態に巻き込まれるなんて、運が悪かったとしか言えませんね」

「時が全てを証明してくれます」

「お送りしましょう。パトカーで行った方が、このまま出て行くより安全です」

結局のところ、外では大勢の記者が天野奈々を待ち構えていた。

「結構です。夫が外で待っていますから」

そう言うと、天野奈々は警察官に頭を下げ、すぐに警察署の裏口へと向かった。

墨野宙が十分注意していたにもかかわらず、おそらく警察署内部から外部に情報が漏れたのか、メディアはすぐに警察署の入り口に集まり、天野奈々を取り囲んだ。

「天野さん...天野さん、待ってください。インタビューに応じてください。外では近藤好子さんを死に追いやったと噂されていますが、本当ですか?」

「あなたと近藤さんの関係は、警察が発表したほど単純ではないのではないですか?」

「近藤さんがあなたにこだわったのは、あなたが極端な手段で近藤さんを抑え込んだからではないですか?」