SMYの事務所でさえ、浅川司がこの時期に姿を現して新しい事務所を探さなかったのは、愚かの極みだと思っていた。
「彼にそんな頭があれば、あの容姿で、とっくに全国区になっていたはずだ。今頃、実家で親父の野菜売りを手伝うなんてことにはならなかったのに」
「まあ、有名にならなくて良かったよ。もし有名だったら、今回の件は本当に収拾がつかなかっただろう。私も十分注意していたのに、どうしてこんなスキャンダルが出てきたのかしら」
マネージャーは会社の責任者に言った。
「芸能界の最底辺にいて、秘密なんて持てると思ったの?」
誰もが、浅川司が「おとなしく」実家で農民をしていて、この件に関わらなかったことを幸いに思っていた。結局、彼のような背景もなく、枕営業も拒否するタレントは、成功する道がないのだから。
SMYのメンバーたちは、浅川司一人だけが外部から称賛されることに納得がいかず、暴力団を雇って浅川司の実家の店に嫌がらせをしに行かせた。
「お前の息子に伝えろ。身を隠しておけと。俺たちの目に触れたら、見かける度に殴られることになるぞ」
数人の屈強な男たちが店に押し入って暴れまわり、浅川司の両親は恐怖で震え上がった。
その後、浅川お母さんは浅川司の将来に影響が出ることを恐れ、この脅迫事件を胸に秘めた。
そのため、浅川司はこのことを全く知らなかったが、中村さんは情報網が広く、事情をよく把握していた。彼女は浅川司の代わりにこの恨みを覚えておくことにした。
……
すぐに、浅川司が男性第二主演を務めるドラマが、ある有名テレビ局のゴールデンタイムで正式に放送開始された。
出演者は全員新人だったが、みな美男美女揃い……悪魔、クール、天才などのキャラ設定も相まって、演技は際立っているとは言えないものの安定していた。放送開始からわずか2話で、外部から大きな反響を呼んだ。
「ねえねえ、最新の恋愛ドラマ見た?乙女心が溢れちゃう~」
「マジで、ルックスのレベル高すぎ。画面越しでもコラーゲンが溢れ出てるのが分かるわ」
「若かった頃を思い出すわね」
「まだ2話だけど、見終わってみると悪くない。意外と俗っぽくないのが珍しい」
「これは追いかけなきゃ!やっと面白いドラマが出てきた!」