第852章 夏目栞を許す

「そう思わせておけばいい」天野奈々は軽やかに自然な笑みを浮かべた。「彼女にはもっと自信を持って知的になってもらう必要がある……これはあなたが私に教えてくれたことですよ、墨野社長。私が夏目栞を海外に送り出したのは、すべてあなたの示唆があったからです。この責任を私一人に押し付けないでください」

「私には関係ないよ。私を巻き込まないでくれ」墨野宙は優雅に笑いながら言った。

以前、世間が夏目栞に過度な関心を寄せていたのは、彼女についての新たなスキャンダルを聞きたがっていたからだ。当時は、マネージャーが定期的に夏目栞のゴシップを流していたため、彼女の炎上体質が続いていた。今や夏目栞がスーパースターと契約を結んだことで、外部から彼女の情報を得ることは、もはやそれほど容易ではなくなっていた。

もちろん、視聴者たちはそれを軽蔑していた。

なぜなら、夏目栞がどのような形で再び現れようとも、彼女の黒歴史は消せないからだ。マネージャーがこれらのスキャンダルを暴露したとはいえ、これらのゴシップ情報は、必ずしもすべてが虚偽というわけではなかった。

……

まもなく、星野晶は次の試合に臨むことになる。最も有望な新進気鋭の歌手として、星野晶はトップ100に入ってからは、多方面での実力を発揮し、その勢いは止められないものとなっていた。天野奈々は星野晶の担当者として、アーティストの試合に自ら会場に足を運んで支援することを選んだ。

ただし、入場前には記者たちに囲まれるのは避けられず、星野晶に関する質問の他に、記者たちは意外にも夏目栞のことも気にかけていた。

「天野さん、夏目栞がどこに送られたのか教えていただけませんか?海外で活動することになったのでしょうか?」

「天野さん、このような対応で夏目栞のイメージを改善できると思いますか?」

「夏目栞は、スターメディアの失策となってしまうのではないでしょうか?」

天野奈々はテレビ局に向かいながら、記者たちの質問に手早く答えた。「夏目栞には彼女なりの新しい分野があります。そして、彼女はイメージ改善を必要としていません。私は彼女が天地を覆すような悪事を働いたとは思っていません」

「しかし、彼女の乱れた私生活は、社会全体に悪影響を与え、悪い見本となっています」