第951章 功高主を震わす

浅川司は少し怖くなったものの、佐藤社長の言うような後悔はしていなかった。結果は予想できなかったが、自分の選択を最後まで貫き通すつもりだった。

すぐに、浅川司は荷物をまとめて撮影現場に入る準備をしていたが、その撮影現場は資金の問題で、無期限に撮影開始を延期することになった。

浅川司はそれを聞いて、何か様子がおかしいと感じ、監督に電話して理由を尋ねた。監督はため息をつき、ただ静かに言った。「誰かが大株主の機嫌を損ねたらしくて、投資が突然引き上げられてしまったんだ。浅川君、本当に申し訳ない!」

浅川司は青天の霹靂を受けたように、頭が真っ白になった。資本というものはこんなにも残酷で、他人の労力を完全に無視できるものなのかと。

これが佐藤社長の仕業だと気づき、浅川司は怒りを覚えたが、どうすることもできなかった。

すぐに、佐藤社長は再び浅川司を訪ねてきた。表面上は非常に丁寧な態度で「浅川君、君が出演予定だった作品が資金の問題で中止になったと聞いたよ。最近のスケジュールも確認したが、今回は断る理由はないだろう?」

浅川司は胸の中の嫌悪感を抑えながら、佐藤社長に対して冷静さを保とうとした。「佐藤社長、私はスーパースターの所属タレントですから、やはり事務所に相談しなければ」

スーツ姿の佐藤社長は葉巻を吸いながら浅川司の肩を叩き、頷いた。「そうだな。ただし、よく考えてほしい。私の義兄も海輝の株主の一人だ。リソースもプラットフォームも一流だ。私について来れば、必ず国際的なスターにしてやる」

浅川司はその言葉を聞いても特別な待遇を感じるどころか、むしろプレッシャーを感じた。

なぜなら、この佐藤社長は彼らも海輝の株式を持っているということを告げているのだから。

所詮、力の差は歴然としていた。

しかし、少し落ち着いてから、浅川司は天野奈々に電話をかけ、事の顛末を全て話した。天野奈々は聞き終わると、浅川司に「電話を佐藤社長に渡して」と言った。

浅川司はその通りにした。「天野社長です」

佐藤社長はそれを聞くと、意味深な笑みを浮かべた。天野奈々でさえも恐れることはなかった。同じ資本家同士、しかも海輝の親戚である彼を、天野奈々が本当に何かできるとは思えなかった。

「佐藤社長...」

「天野社長、お名前はかねがね承っております」