第994章 そもそも私のものでもないのに、何を奪うというの?

看護師の話によると、天野明日野が罰を受けているということを聞いて、天野奈々は視線を墨野宙に向け、笑って言った。「この魔女も、ついに妖怪退治の人に出会ったようね。」

「芸能界のことから手を引いたのに、今度は人の縁結びをしたいの?」墨野宙は病室で天野奈々に付き添いながら、仕事をしつつ、冗談めかして言った。

「ベッドに寝ているだけでも退屈なのに、数ヶ月も寝なければならないのよ。」天野奈々は少し困ったような表情を浮かべたが、大きく膨らんだ腹部を見つめると、心を和らげざるを得なかった。「宙、他のことは口出ししないけど、『アリの女王』の後期制作は、必ず私が監督しないと。」

天野奈々の向かいに座っていた墨野宙は、その言葉を聞いてペンを置いた。「それくらい簡単なことだ。」

「栞のお兄さんは、もうこちらの病院に転院してきたの?」

「特別病室で、専門の医療チームを結成した。あとは天命を待ち、人事を尽くすだけだ。」墨野宙は頷いた。

その後、天野奈々は黙り込み、ただ遠くから墨野宙を見つめていた。

いつ見ても格好良く魅力的なこの男性を。

「そうそう、ファンからSFマンガが届いているよ。陸野徹に持ってきてもらうように言っておいた。暇つぶしになるだろう。」

「こんなものを送ってくる人がいるなんて。」

この時、天野奈々と墨野宙は、まだその侵略的な気配に気付いていなかった。なぜなら、このマンガの持ち主は、一度気に入ったものは必ず手に入れなければ気が済まない人物で、どんなに大変な努力が必要でも、たとえ十年八年かかっても諦めない性格だったからだ。

以前は芸能界にほとんど関心がなく、当然天野奈々という人物にも注目していなかった。

今興味を持ったのは、ただ二文字の理由からだった。縁!

……

天野明日野は深夜まで苦しめられ、家に帰ろうと思ったが、医師宿舎で倒れ込んでしまい、まったく起き上がれなかった。

「陸野光、この馬鹿野郎!アソコが萎縮して不能になればいいのに!」

しかし、予想外なことに、陸野光も家に帰らず、彼女の上段ベッドに寝ていた。天野明日野は驚いて叫んだ。「ここは女医寮よ!」

「部屋が足りなくて、ちょうどここが空いていたんだ。」陸野光が上から答えた。